【ビジネスの明日】#70 MAW(マウ)社長 星野大輔さん

「結婚式に関わる新しいビジネスモデルになれば」。そう力を込めるのは、ウエディング専門の情報サイト「IINDA(イインダ)」の運営を主力にするMAW(マウ)(松本市大手3)の星野大輔社長(37)だ。式場の新しい選び方を提案し、「結婚式文化」を残すと共に、地方都市の魅力の発信につなげるという。

式場以外での多様な結婚式を

IINDAは、これまで結婚式場としては使われてこなかった施設での挙式を実現させるための情報サイト。既に、神社やレストラン、カフェ、旅館など、県内の具体的な約50の施設の詳細な情報と、価格帯などが掲載されている。中には自治体が運営する果樹園の中のレストランや山小屋など、ユニークな施設もある。
掲載された場所での挙式を希望した場合、施設側との式の準備や段取りなどは同社が一括して行う。施設側は、基本的に特別な用意はなく、通常のサービスを提供する。
衣装やカメラマンなどの「持ち込み料」は原則無料。引き出物も、新郎新婦が本当にプレゼントしたい地元の土産などだけで構成することができる。価格は一般的な価格の半分以下に抑えられるという。
昨年11月22日にサイトを開設し、これまでに約5千人が閲覧し、30組前後が問い合わせをしてきたという。「将来的に年間100~200組の問い合わせがくる媒体になれば」と見据える。
現在、結婚式場で挙式、披露宴をする人たちの割合は全体の約45%で、残りは、多様な考え方を持ちながら、選択に悩んでいる状況といい、「式を挙げたくないと思っている人たちに、まず場所の選択肢を提示し、『ここだったらやってもいい』と、気持ちを動かしてもらえたら」と期待する。
かつての結婚式は、地域の神社で式を挙げ、公民館で披露宴をするなど、「結婚という『お祝い文化』を地域で受け止めていた」とし、「今は式場という『箱』の中で全てが完結してしまい、それが限界に来ている。もう一度、結婚という文化と地域をつなげられたら」と、自身の目指すゴールを定める。
約14年間、ブライダル業界に勤務。その中で、結婚式場だけの挙式にとらわれない、新たな挙式スタイルを模索し、事業化を目指した。それがIINDAの“種”となり、独立のきっかけになったという。
「『ありがとう』という感謝の気持ちがあって、人生が形になるのが結婚式。この文化はなくしたくはない」

ほしの・だいすけ 1988年、東京都出身。日大明誠高(山梨県)から日大に進学。卒業後、都内のブライダル会社に就職。2012年、松本市に転勤。24年8月、同社退社。同年11月、MAWを設立し社長就任。