満蒙開拓団の手記朗読する菅谷瑞恵さん 山形村でも体験者の話を聞く 「記録 世に残したい」

名古屋市在住の俳優、菅谷瑞恵さん(51)は、ライフワークとして満蒙(まんもう)開拓団の手記朗読に取り組んでいる。2月は、アーティストが冬の信州に滞在し英気を養うプログラム「アーティストの冬眠」で、山形村に滞在。地域の文化に触れ、開拓団体験者の話を聞いた。「埋もれてなくなってしまう記録を、世に残していけたら」と一人、静かに発信し続ける。
活動のきっかけは2018年。所属していた劇団が、アフガニスタン内戦で国を追われノルウェーに暮らす、ファリダ・アフマディさんの作品を舞台化し、ノルウェー公演に行った。
故郷を追われ異国で暮らすファリダさんから「世界を平和にするためにできる行動は何か」と問われ、衝撃を受けた。表現者として何ができるのか。頭に浮かんだのが、かつて劇団が取り上げた満蒙開拓団だった。
満州事変(1931年)後、日本が大陸に送り込んだ農業移民団。全国から約27万人、長野県からは最多の約3万3千人が送り出され、戦後も多くの苦難に見舞われた。図書館の片隅に、当事者の手記が眠っていたことを思い出した。
阿智村の満蒙開拓平和記念館、東京・新宿の平和祈念展示資料館、旧満州(現・中国東北部)のハルビンも訪問。理解を深め、開拓民の手記朗読を一人で始めた。東京や個人から借りた手記を再構成して朗読した動画を、2020年5月からユーチューブで毎週配信。約250本を投稿した。
初参加だった山形村での「アーティストの冬眠」では、思いがけない出会いが多々あった。滞在先の協力で、村在住の元開拓民から話を聞く会を開催できた。地域に住む中国残留孤児の帰国者にも直接話を聞けた。
菅谷さんは「手記を読んでほしい、後世に残したいという人がいれば、ぜひ連絡を」と呼びかける。
ユーチューブの題は「満蒙開拓を語り継ぐ手記朗読プロジェクト」。問い合わせはメール(mizuesomb@gmail.com)で。