
楽しくわいわい登れる場に
生坂村にほど近い安曇野市明科南陸郷の古民家。外観からは想像がつかないが、屋内にクライミングウォールがあるクライミングジムだ。リノベーションをしたのは、クライミングの裾野を広げようと活動している、一般社団法人ソーシャルクライミングクラブ代表の早石利枝さん(52、朝日村古見)だ。
いろいろなジムと共催して大会を運営する中で、自前の施設が欲しくなったという。3年ほどかけて場所を探して工事をし、プレオープンにこぎ着けた。古民家の屋号を踏まえ、ジムの名は「MiSEYA(店屋)」。
商業ジムとは違うスタイルで、クライミングや山登り、自然散策が好きな人など、「いろいろな人が気軽に集まれる場所にしたい」と早石さんは話す。
土間打ちなどもほとんど自力で
クライミング普及を目指す早石利枝さんから見ると、安曇野市はジムの「空白地帯」だった。そこに拠点をつくりたい。条件は、人が集まりやすく、大勢来ても近所に迷惑がかからない場所。クライミングウォールを立てられる高さと広さがあり、改修できる古民家。自身がいま取り組んでいる空手の練習をしたいので、畳敷きの部屋も欲しい…。
そんな思いで探し始め、ようやく理想の古民家に巡り合えたという。改修作業は昨年春から。知人らの協力を得ながら畳を運び、床板や垂木を外し、掘りごたつを撤去。業者に土間打ちを頼むと「ここまでやれたんだから、自分でやりなよ」と感心され、砂利の運び入れやコンクリートでの土間打ちもした。2階の床板を一部はがし、吹き抜けにして高さを生み出した。さすがに登る壁の設置は、安全を考慮して専門業者に依頼したが、ホールド(手掛かり)を取り付けたり、下にマットやじゅうたんを敷いたりしたのは、自力だ。
土蔵にあった大きなたるを解体し、その板を使って床下をふさいだり、土間周りに張り付けたりしてまきストーブを置き、和めるスペースを創出。2階部分は、壁を見下ろすようにして残した場所に本棚を置き、外を眺められる休憩スペースや、ストレッチなどができる畳敷きの部屋などを造った。当初は今年春のオープンを予定していたが、少しずつ環境を整えたり補修したりして、昨年12月にプレオープンを果たした。
ジム以外での活用も視野に
「壁はさほど高くなく、難しい課題設定も基本的になく、運動靴や靴下でも大丈夫。初心者から、登山時の岩稜(がんりょう)歩きを練習する人、けがやブランクから復帰に向け体を慣らす人などに、気楽に登ってほしい。親子でも楽しめる」と早石さん。傾斜角度やホールドの配置が世界共通の「ムーンボード」という壁もある。「いろいろなレベルの人に来てもらい、楽しくわいわいと登ってほしい。ステップアップしたくなったら、近隣の本格的なジムへ行ってもらえれば」と話す。
口コミなどですでに人が集まり始めている。同所で「整体をしたい」という申し出があるほか、レンタルスペースとしての活用、「泊りプラン」なども思案中という。
3月中はプレオープン料金で、子どもも大人も2時間500円。付き添いも同料金なので「ぜひ登って」と早石さん。期間中は月・水・木・日曜の午前10時から午後4時(日、祝日は7時)まで。12、16日は休業。4月からは月2回のシニアクライミング講習(おおむね50歳以上、初心者歓迎)も開く。4月は1、19日の午後1~3時、1回1500円(施設利用料込み)、定員6人。申し込みはメールsocialclimbingclubnagano@gmail.com。営業日などはインスタグラム=こちら=で確認を。