
夫の転勤に伴い、1年前に札幌市から松本市へ引っ越してきた野月巴音(はのん)さん(25)が、ペン画で地域に溶け込んでいる。絵が気に入られて市内の喫茶店で働き始めると、店の客からもさまざまなデザインを頼まれるように。「一度も札幌から出たことがなく不安だったが、松本があっという間に居心地のいい街になった」と笑顔だ。
野月さんがペン画を描き始めたのは2年前。街を歩き、気に入った店の写真を撮り、家で描く。下描きはせず一発勝負。昨年3月に松本へ来てからも、散策をしては時折ペンを執った。
転機は同9月。自宅近くの喫茶店「コーヒーハウスポプラ」(双葉)で描いていたところ、佐野和貴店長(33)の目に留まり、その場で店のコーヒードリップバッグのデザインを依頼され、同店で働くようにもなった。
10月末には、建築資材卸販売・林友(渚4)の杉山良一常務が、同店で野月さんの絵を目にし、同社が得意客に贈る2025年の卓上カレンダーの絵を依頼。その後も、店舗経営者からショップカードのデザインを頼まれたり、外回りの営業社員から自己紹介資料のデザインを頼まれたりした。
「札幌でも喫茶店で働き、私が絵を描くこともお客さんは知っていたけれど、こんな展開はなかった。松本はすごいというか、不思議というか…」
ポプラは今後、野月さんデザインのマッチ箱などを作る計画。「絵を学んだことはなかったが、松本に来てすごく勉強になっている」という野月さん。「松本の人たちが私の中にあるものをぐいぐい引き出してくれ、描けるものの幅がどんどん広がっていくんです」と目を輝かせる。