松本の小中高生のジャズ楽団3月20日演奏会高3生巣立つ

かけがえのない出会いに感謝

松本市などの小中高生で構成するジャズ楽団「ザ・ビッグバンド・オブ・ミュージックトイズ」が3月20日、毎年恒例の「スプリングコンサート」を市中央公民館(Mウイング、中央1)で開催する。
団員60人中、高校3年の16人には卒団記念ステージでもある。その一人、トランペットの藤井今日生(きよき)さん(18、同市)は今春から、プロを目指して昭和音楽大(川崎市)でジャズを学ぶ。トイズの音楽監督で世界的トランペット奏者、エリック・ミヤシロさんの指導を受け、腕を磨いた。
既にプロになった卒団生がいる。安曇野市出身のドラム奏者、長尾風飛(ふうと)さん(22、川崎市)。約200人の卒団生で唯一のプロだ。
「音楽人生でかけがえのない出会いをもらった」とトイズに感謝する長尾さん。練習に励む後輩の激励に訪れた。

プロとしての道 プロを目指す道

「少しテンポを上げよう」「ここはメロディーを大切に」。スプリングコンサートに向け、Mウイングに集まった「ザ・ビッグバンド・オブ・ミュージックトイズ」の合同練習。高校3年生の団員らが演奏曲ごとに注意点を挙げ、完成度を高めた。
脇で見ていた長尾風飛さんは「みんな上手になった」と感心。「20日は心を一つにした演奏を」と願い、「4年前までここで練習していたんだな」とトイズ時代の自分を思い出した。
小さい頃から音楽が好きで、音楽教室に通ってドラムを習った。小学校の担任を通じてトイズを知り、中学1年で入団した。
ある日、トイズの講師を通じてプロドラマーの海野俊輔さんを紹介された。「ジャズをしっかり習いたい」と思っていた時だった。
海野さんから演奏技術を伸ばすための助言を受け、「この曲はどう演奏するのが最もふさわしいか、考えることが大切」と教わった。以来、他の楽器の音をそれまで以上に聴くようになり、演奏者全員で一つの曲を作ることを心がけた。
一層ジャズに傾倒した長尾さんは、トイズの練習後もドラムから離れず、残った団員たちと自由なセッションに興じた。輪の中にトランペットの藤井今日生さんもいた。
藤井さんは小6でトイズに入った。トランペットで難しい高音を出せる逸材だったが、指導に訪れたエリック・ミヤシロさんの演奏に触れ、「すごい」と驚嘆。ミヤシロさんに演奏法についてたくさん質問し、全て丁寧に答えてもらった。
中学、高校とコンクールで入賞するほど腕を上げ、「いつかミヤシロさんと一緒のステージに」と夢を膨らませながら、プロになる思いを固めていった。他の団員たちは「今日生なら名高い演奏家になれるよ」と応援し、長尾さんも「向こうで一緒にセッションしよう」と声をかけた。
もちろん2人の行く道は平たんではない。都内の音楽専門学校を経てプロの世界に飛び込んだ長尾さん。プロ歌手のCD録音に参加するなど活躍の場を広げているが、「まだ道を歩き始めたばかり」と語る。藤井さんも「基礎を固めないとプロでは通用しない」と認識している。
それでも長年彼らを見守ってきたトイズの後藤浩輔団長(55)は「心配していません。どんな壁に当たっても恩師とトイズの仲間が励ましてくれますから」と断言する。
後藤さんにも夢がある。「2人が一流のジャズマンになり、一緒にトイズの指導に来てほしい。実現すると確信しています」
20日のスプリングコンサートは午後1時半開場、2時開演。スタンダードナンバーなど12曲を演奏する。入場無料。問い合わせは後藤さん℡090・7701・0757

ザ・ビッグバンド・オブ・ミュージックトイズ】  松本市などの小4~高3生が集まったジャズのビッグバンド。「音楽を一生の友にしてもらいたい」と、安曇野市で楽器修理工房を営む後藤浩輔さんが2005年4月に創設した。毎月4回ほどMウイングで練習し、「クリスマス」「スプリング」の定期コンサートや、県内外のイベントで演奏する。プロ演奏家らを招き指導も受ける。