自身をプレゼン「就職披露宴」―ウェブエイト新入社員・山口千尋さん

松本市神田1のウェブサイト制作、ブランディングなどの会社「ウェブエイト」(草間淳哉社長)が、専門学校を卒業して4月に入社する山口千尋さん(20)の「就職披露宴」を開いた。「将来の夢がないのがコンプレックスだった」という山口さんが、聞き慣れないイベントを一から企画し、そこで披露したかったこととは―。

「誇れる自分」へ一歩

長野市で生まれ育ち、幼い頃から「なりたいもの」がなかった山口さん。昨秋、草間社長(47)や社員と面談し、「『これまで何をしてきたのか』ではなく『これからどう生きたいのか』という未来を一緒に考えてくれる」と感じたウェブエイトへの就職を希望した。
「『誇れる自分になりたい』という夢が見つかった」と話す山口さん。専門学校で学んだプレゼンテーションが得意と聞き、同社の岡森英幸さん(42)が「これまでにないスケールでプレゼンする機会を設ければ、自分に自信が持てるのでは」と、入社前に「就職披露宴」を開こうと提案した。

13日夜に松本市のイオンシネマ松本で開いた披露宴は、来場者80人余に入り口で「夢を持てない私たちへ。白紙だった私が創る、誇れる自分。」と書かれた、招待状のようなリーフレットを配った。
会場のシアターで、映画を上映するスクリーンに山口さんの出身校や趣味、特技、これまでの活動などを文字や写真で投影。「将来の夢はなんだった?」と尋ねられた山口さんは「保育園の頃は、友達のまねをした。小学生の時は母の職業を作文で書いて発表した。中学の進路志望調査は白紙で出した」。
高校では選手を支える陸上部のマネジャー。進学した岡学園トータルデザインアカデミー(長野市)で「自分に合うことを見つけたい」と、オープンキャンパスのスタッフなどをやってみた。希望の職業に就こうと頑張る友人や同級生らの姿を見て「何もない自分が嫌だった」とも。
提案を受けて企画した披露宴は、卒業前の制作展など学業との両立が大変だったが、やり遂げたことが大きな自信になったという。「今、やりたいことが見つからないといった不安を抱えている人も少なくないと思う。周りの人と比べるのではなく、自分は自分。今、白紙のままでも大丈夫」とプレゼンを結んだ。

草間社長は「新入社員が入社前から歓迎されていることが分かる。即戦力にもなる。今後は他の会社も誘って開きたい」。山口さんの友人・塚田ひかりさん(20、千曲市)は「『誇れる自分』という言葉に共感した。ありのままの自分で働けたらいい」と話していた。