【農トピックス】#12 獣害

県と市、部署合同で現地視察

春、屋外の農作業が本格化する時季は、動物も活発に動き出す。作物の獣害に苦しむ生産者らが、行政を現地視察に連れ出した。
松本市中山地区。遊休農地を耕す「中山そば振興会」は、シカに悩まされている。昨年は計35ヘクタールの畑のうち「2、3割がやられた」と百瀬文仁代表理事。ある畑は、実を付けた頃に食べ尽くされ、丈がきれいにそろった株が残された。「コンバインで刈られたようだった」と百瀬さんは悲しむ。
町会役員が地元県議に掛け合って、今月14日、現地視察が行われた。県から松本地域振興局の松本農業農村支援センターと林務課、松本市からは農政課と森林環境課の職員が集まった。地元の生産者、町会役員、猟友会員らが加わり、15人の視察団となった。
最初に牛伏川上流へ上った。山林を縫う川筋にシカの防護柵の途切れているところがある。現場を見渡し、「シカはよく見ますか」という行政職員の問いに「川を歩いて渡っているよ」と答える声。新たな柵を立てる場合の大まかな位置をみんなで確認した。
次は里へ下り、弘法山と連なる中山の丘陵へ。一帯はすでにシカやカモシカの生息域になっているという。わなの状況を共有した。
農業の獣害は県全体で増加傾向にある。昨年度の被害額は3億7千万円で、前年度から15%も増えた。
松本盆地は東側でシカ、西側でサルの被害が多い。中山地区のように、行政が横断的に集まって視察する機会が増えているという。
この日は、代表して松本農業農村支援センター所長が「実態はつかませてもらった」と締めくくった。
同行して知ったのは、同じシカ相手でも対策によって担当が分かれること。市では、柵による防除は農政課、わなや猟銃による駆除は森林環境課になる。視察には、それぞれの責任を確かめるようなところもあった。
ただ、せっかく一緒に実態を把握したのだ。縦割りを超えた具体案も期待したい。