“第二の図書館”見つけ地域経済活性化を―高校生がスタンプラリー企画

いつもの図書館ではない、もう一つの図書館を見つけて、心豊かに暮らすきっかけにしてほしいー。そんな思いを込めた「見つけに行こうセカンド図書館」と題したイベントが、今月から始まった。
舞台は山形村図書館、松本市の波田図書館と松本空港図書館。5月10日まで、3館を巡ってスタンプを集めると、景品がもらえる。発案したのは長野高校2年生の岩佐天花(てんか)さん(17、長野市栗田)だ。
3~12歳を山形村で過ごした岩佐さん。住んでいた当時は当たり前に感じていた村の温かさや、同村図書館の良さも知ってほしいーとの思いから、「図書館を中心に、地域経済の活性化を図りたい」と企画。地域や大人を巻き込んだ、初の試みだ。

複数館利用促し人の流れ創出

「小さい頃からあちこちの図書館に連れて行ってもらっていた」という岩佐天花さん。松本市や塩尻市の図書館へも行ったが、山形村図書館は特別だった。小1の時に図書館司書という職業を知り、「将来は司書になりたい」という夢を与えてくれた場所だ。
いろいろな人が集まっていた。司書を中心に交流が生まれ、おしゃべりをしたり情報交換をしたり。アットホームな雰囲気で、週末に家族で訪ねるだけでなく、自身の放課後の居場所でもあった。
中学生になって長野市に引っ越した。村を離れて、それまで気付かなかった良さを実感した。下校時に声をかけてくれる人。地域の人がみんなで子育てをしている雰囲気…。やがて、その良さを「多くの人に知ってもらいたい」と思うようになった。
長野高校に進み、ゼミ形式の授業で本年度、「図書館で地域経済を活性化させるには」をテーマに研究。その一環で、イベントなどの企画を10案ほど作り、山形村図書館司書の百瀬恵津子さんらに相談した。
百瀬さんらは「引っ越して何年もたっているのに、村と図書館のことを考えてくれてうれしかった。職員にはない着眼点で面白い」と全面的に協力。長野市在住でもできる事をーと選ばれたのが、松本市の図書館とも連携を取りながら行うイベント、「セカンド図書館」だ。
転居先の長野市で図書館に通うと「知らない人が多くて人との交流もなく、初めは緊張した」が、自習スペースが充実しているなど別の良さがあった。図書館にはそれぞれ特長があると実感した。いつも通っている館だけでなく、「別の館も利用して『いいとこ取り』をすれば、すてきな図書館ライフを送れる。周辺の店や公園を訪ね、地域を知ることもできる。人が行き来すれば地域の活性化になる」というのが、イベントの構想だ。
スタンプ台紙を兼ねるパンフレットには、山形村、松本市波田、同市空港の3図書館の特徴や写真に加え、近隣の飲食店や公園、イベントなどの「おすすめスポット」も掲載。160部を印刷した。飲食店などに置いてもらうポスターや、消しゴムを彫って3種類のスタンプも作製。景品に缶バッジとしおりを作り、山形村教育委員会から譲り受けたカプセルトイ3種類を準備した。経費は「お小遣いで」捻出した。
山形村図書館によると、取り組みを知った子どもが友達を連れてきたり、「高校生が考えたなんてすごいね」「こっちの図書館には行ったことがないから、今度家族で行ってみよう」などの声が聞かれたりするという。
「将来はパンフレットに広告を載せるなど、経済的な事も計画して広範囲で行い、『セカンド図書館』という考えを広げたい」と話す岩佐さん。「自分に合った図書館が見つかれば利用が増える。イベント開催や情報発信など時代に合った活動をしていけば、図書館の活用が広がり、地域の活性化につながるのでは」と話している。活動などはインスタグラムから。