
池田町の安曇野東山包(つつむ)美術館(会染)で、「色紙展」が開かれている。館長の師岡昭二さん(同)が個人で所蔵する100枚以上の中から、半数ほどを選んだ。今月で98歳。展示作品は、自分で2階の展示室まで運び、一人で設営した。少々聞こえにくくなったが、足腰は元気。自身の交流を振り返り、今の仕事ぶりを確かめる展示になった。
作品を選んだ基準は「町にゆかりのある人のもの」。同町生まれで、童謡「てるてる坊主」の作詞者・浅原六朗(1895~1977年)の色紙は、「町に浅原六朗文学記念館ができた時(82年)に奥さんから頂いた」。
記念館の建設費用は浅原家が寄付したこと、それを預かっていた「あゝ野麦峠」の著者・山本茂美(1917~98年)の家に行ったことなど、思い出は尽きない。会場には山本の色紙もある。
歌人で書道家の岡麓(ふもと)(1877~1951年)のコーナーには、色紙の他、自筆原稿を印刷した歌集「土大根(つちおおね)」や、疎開して住み終焉(しゅうえん)を迎えた家「内鎌草庵」(会染)の写真などが並ぶ。
会染小学校の校歌を作詞した詩人・勝承夫(よしお)(1902~81年)の色紙もある。勝は「小ぎつね」「灯台守」など童謡唱歌の作詞も多く手がけた。「小学校の校長室で書いてもらった」という。
他にも町出身のマラソンランナー中山竹通(たけゆき)さん(1959年生まれ)、町を訪れた「木枯し紋次郎」の作者で作家の笹沢佐保さん(1930~2002年)ら、多方面の有名人が書いた色紙が並ぶ。
師岡さんは1927(昭和2)年生まれ。23歳で当時の会染村役場に入り、その後の町村合併に伴って池田町役場の職員となった。60~70歳の10年間は町長を務めた。曲折もあったが「私の知る限りの歴史を伝えられたら」と笑顔を見せる。
展示は4月20日まで。午前10時~午後5時。300円(学生は無料)。木曜休館。同館TEL0261・62・5078