
自然に囲まれた環境で、時間を気にせず、ゆっくり本や飲み物を楽しめる。そんなぜいたくな空間が2025年4月6日、安曇野市に誕生する。「ブックス&セルフカフェあすなろ文庫」(穂高有明)だ。
オーナーは南澤睦美さん(44)。「何か自分でやってみたい」と、カフェを開くことを思いついた。画集、エッセーが好きで、「他の人にも見てほしい。画集などをたくさん置いてあるブックカフェがあってもいいかな」。
ドリンクやスイーツは自分で席に持って行くセルフシステム。器にも凝っていて、マグカップなど、一つ一つが違っている。個別スペースが確保されているので、自分の時間に浸れる。「心身共にリラックスしてほしい」と南澤さんは言う。
時間気にせず有意義に過ごす場
雑木林の中にある「ブックス&セルフカフェあすなろ文庫」。ドアを開けると、書棚にずらりと並んだ本が見える。画集やエッセー集を中心に、小説、雑誌など蔵書数は300冊以上。画集、イラスト集は約80冊ある。
テーブル席はなく、カウンター席のみで、頭まで預けられる背もたれの高い椅子が12脚。一人一人ゆったりできるようにと、椅子と椅子の間に麻布をつるし、個別スペースを確保する。窓から外が見え、それも一枚の絵のようだ。
利用料はドリンク2杯(コーヒー、紅茶など5種)、おやつ2個(個包装のクッキー、焼き菓子3、4種)が付いて千円。器も楽しんでほしいと、さまざまなグラスやカップを置く。紅茶などのトッピング用にドライフルーツも用意する。時間制限がないので、じっくり本と向き合えるのがうれしい。
オーナーの南澤睦美さんが、ブックカフェを開く原点となった画集がある。ヒグチユウコさんの「CIRCUS(サーカス)」だ。もともと絵を見ることが好きで、2021年、上田市で開かれた作品展に出かけ購入した。「細かい描写、独特なキャラクターが好き」。その後、画集、イラスト集を集めるようになった。
工場勤務を長く続けたが、「自分で何かやってみたい」とカフェ経営を決意。ヒグチさんの画集を見て、「ユニークなブックカフェがあってもいいのでは」と画集、イラスト集、エッセーを中心に本を置くことにした。
放浪の画家、山下清(1922~71年)の作品集は「子どもの頃、ドラマを見ていて親近感があった。タッチが違ったり、風景や虫が対象だったりと、作風の違いが面白い」と南澤さん。「読むのではなく、鑑賞できる本。癒やされる」
ファッション、ライフスタイル、アート、旅など、さまざまなジャンルの雑誌も楽しめる。今後さらに蔵書を増やすといい、「いずれは窓辺にも置けたらいい」と構想が膨らむ。
スマートフォンやパソコンを使う時間が長くなる今、目の疲れや頭痛、肩凝りなど、体の不調に悩まされる人も少なくない。南澤さんは「ディスプレーを見ない時間、日があってもいい。デジタルデトックスも兼ね、有意義な時間を提供できたら」と話す。
スマートフォンで本や漫画を読む人もいるが、何かせかされているようで、記者は苦手だ。紙の質感や香りを楽しみながら本を読む時間はまた格別。「静けさの中、時間が止まったような感覚を味わいながら、リラックスして過ごしてほしい」。南澤さんの願いだ。
午前10時~午後6時。火曜、第1月曜定休。地図はこちらから。℡090・6566・0623