てんかんに理解ある社会へ 3回目の「パープルデー信州」交流定着

てんかんへの理解を広め、連帯を示すイベント「パープルデー信州」が今年で3回を数えた。世界的な啓発活動「パープルデー」を県内で初めて行うイベントとして2023年に始まり、毎年、3月下旬に行われている。当事者たちが前面に出て、地域と交流する場として定着してきた。
今年は3月20日、会場をこれまでの松本城公園から信毎メディアガーデン(松本市中央2)に移して開かれた。
誰にでも参加してもらおうと、毎回、内容を工夫している。今年は、屋外広場にキッチンカーや出店を出して道行く人を楽しませ、屋内ホールには薬剤師の仕事を体験したり患者の描いた絵を鑑賞したりするコーナーをつくった。運営には、日本てんかん協会県支部や医療関連会社が協力した。
そんな中、第1回から変わらずメインイベントなのが、患者が語る講演会だ。今年は、高校時代に発症した同市反町の山田みかさん(34)が母親と登壇。昨年手術を受けて症状が安定したことで、周囲と関わることにも気後れしなくなったという。「今は、発作が起きても助けてくださいと言える。人生が変わった」と語った。
客席では、患者や家族が涙ぐむ一方、観光客と見られる、大きなリュックサックを背負った人がうなずく姿もあった。
パープルデー信州実行委員会代表で、信州大病院脳神経外科の金谷康平医師(44)によると、「今年は屋内になったので、落ち着いて話し、聴く、という雰囲気にできた」という。
第1回で登壇した齊藤伸さん(32、長野市)は、「かなり人が増えた」とイベントの成長を喜んだ。一方、「てんかんについて社会の理解が深まった感じは日頃しない」と実感を吐露した。
てんかんは100人に1人がかかるとされる。意外と身近な病気だが、話題になるのは発作で事故を起こしたといった特殊なケースになりがち。偏見にさらされる患者は、自分に否定的な感情を持つ「スティグマ」を抱える。
実際は、発作は薬で6~7割抑えることができ、手術もある。病気の実情を知る人が社会で増えれば、患者のスティグマ感情は減り、生きやすくなる。
金谷医師は、「今回は、ブース販売で社会的な活動ができてうれしかったとか、そういう姿を見て力をもらったという患者の声があった。これからも年に1回、患者が主体的に参加し、交流する場を提供していきたい」と話す。

【パープルデー】3月26日を「てんかん啓発の日」とし、誤解や偏見をなくす活動が世界中で行われる。2008年にカナダの9歳の少女が病気を打ち明けたのが始まりで、少女が好きなラベンダーの紫色(パープル)がシンボルカラーになった。活動に際して、当事者を応援する意味で紫色のものを身に着ける。