心に染みる本との出合いを 松本市役所近くの小さな書店「親子で楽しむ本棚ふくみ」

家族みんなでゆっくり本を選び、読書を楽しんでほしい|。松本市役所(丸の内)東庁舎の南にある複合店舗「信州松本城町文庫丸の内店」に、小さな書店「親子で楽しむ本棚ふくみ」がオープンして4カ月がたちました。オーナーの山口彩さん(37、同市)に、店の様子や本への思いなどを聞きました。

★厳選した180冊
本棚には児童書や絵本、エッセーなど、山口さんが厳選した約180冊が並びます。下段には「樹」をテーマにした絵本を、美しい表紙が見えるように配置。旅行かばんを活用した「親子トランク」の本は、その時々に合わせて入れ替え、春なら新しい環境でスタートする子どもや親の不安に寄り添い、背中をそっと押すようなメッセージ性のある物を多めに選んでいます。
「例えば恐竜が好きな子が、恐竜の本なら何でも読むとは限りません。絵の雰囲気、言葉のリズムの心地よさ、ページをめくる感覚など心を引かれるポイントはそれぞれ。子どもが『この本を読みたい』と思ったタイミングで手に取れるように、そばに置いておくのがお勧めです」
忙しい子育て世帯向けに、短時間でも豊かな読書体験が得られるようなエッセーや純文学の短編集も用意。本の配置は大型書店とは異なり、ジャンルも作家もさまざまで、目当ての本に手を伸ばしたら「隣の本も面白そう」となんてこともありそうです。
原則無人営業で、会計は本に記された金額を料金箱に入れるか、スマートフォン決済アプリ「PayPay(ペイペイ)」で支払います。

★原点は幼少期の読書
松本市で育ち、子どもの頃からさまざまな本に触れてきた山口さん。進学で上京し、卒業後は主に結婚式の司会者としてキャリアを積みました。
その仕事では言葉や文字の力を実感します。「幼い頃の読書経験が自分を支え、多様な価値観に触れ、想像力を養う大切なものだったと改めて感じました」
その後、結婚、出産をして、わが子が本に親しむように。「心を揺さぶられる本と出合うタイミングはとても大切。かつて自分が読書に救われたように、本と人を結ぶお手伝いをしたい」という夢を抱くようになります。
2024年、家族4人で神奈川県から松本市へUターンします。診療所だった建物を改修した松本城町文庫・丸の内店の店舗募集を知り、松本城近くという立地や歴史ある建物の魅力に引かれ、書店の出店を決断します。
店名は愛猫の名前「ふくみ」から。「福が未来からやってくるような読書体験を提供したい」という願いを込めました。

★さまざまな企画も
「観光で訪れた方が立ち寄ったり、大人が自分のために絵本をじっくり選んだり。週2回ほど棚の手入れや在庫管理で店に行き、本が巣立ったのを見ると心が温まります。『本屋ができてうれしい』という声も励みになっています」と山口さん。
待つだけでなく、より積極的に本を届けたいと、お客の要望に沿って選んだ本を宅配する「選書プラン」も。今後は、親子で一緒に楽しめる朗読会も予定しています。
営業時間、休みは城町文庫丸の内店の営業日時に準じます。問い合わせはインスタグラムのメッセージで。