
6月のある日、ほぼ真北の空に太陽が沈んだ。午前0時半をすぎた頃だ。米国・アラスカ州の内陸、ユーコン川の河岸でのワンシーン。なぜそんなに遅い時刻に、しかも北に沈むのか。それはアラスカが地球上で緯度の高い所に位置するからだ。
アラスカは日本の4倍も大きく、南北にも長い。北緯66度辺りから北は夏至の頃、太陽が24時間沈まない。白(びゃく)夜(や)と呼ばれる現象だ。65度周辺だと、1時間程度だけ北の地平線に太陽が隠れ、またすぐに顔を出す。この写真は、太陽が地平線に隠れた瞬間にシャッターを切った。
写っている川はユーコン川。この1カ月ほど前に完全に解け、滔(とう)々(とう)と流れていた。空から23時間陽光が注ぎ、8月後半になると夜が訪れ、オーロラが舞い始める。10月後半には凍り始める。
北の大地、アラスカ。どこまでも広がる手付かずの原野は、24時間光が注ぐ白夜から、陽光が差さず氷点下40度をも下回る極夜(きょくや)まで、両極端な環境となる特異な緯度帯だ。光はいつも柔らかく、優しいコントラストの光景が広がっている。
(佐藤大史)
佐藤大史さんがアラスカで撮影した写真展「北の光景」が、7月12~21日、松本市中央2の信毎メディアガーデンで開かれる。現地の人々の暮らし「ライフ」と、北極圏独特の光「ライト」を写し取った作品の数々。展示作品を毎月第2金曜日、本欄で紹介する。
【プロフィル】さとう・だいし 1985年東京都生まれ、安曇野市豊科高家在住。日本大芸術学部写真学科卒業後、写真家の白川義員氏の助手を務め、2013年に独立。アラスカなど自然を中心に撮影している。