
診療、服薬指導、リハビリを1カ所で受けられたら、移動の手間や費用、時間が節約できる。交通インフラが弱く、高齢者が多い地域では、特に助かるはずだ。
合同会社ももせ薬局(松本市中山)が運営する「ももせ薬局短時間デイサービスらいふラボ」(同市松原)は、利用者に個別のリハビリプログラムを提供。個室でオンライン診療や服薬指導を受けられ、薬も受け取ることができる。診療は、ときのクリニック(塩尻市広丘原新田)が担当、同デイサービスのスタッフに看護師がいるので心強い。
デイサービス施設が独自サービスを提供することで、交通など地域課題の解決や、高齢者や家族の心理的・物理的・経済的負担の軽減にも、期待が広がってきた。
地域課題解決のモデルケースに
「ももせ薬局短時間デイサービスらいふラボ」。管理者(生活相談員)で作業療法士の百瀬幹泰さん(37)が、利用者の目標や目的に合わせた、個別のリハビリプログラムを提供する。筋力トレーニング用のマシン3台、有酸素運動用のマシン2台を置き、介護予防にも力を入れる。デイサービスは男性の利用が少ない傾向があったため、これまでのイメージとは違う施設づくりを目指した。
独自化を模索した際、友人でもある不動産賃貸業、五幸(松本市中央2)の小口拓也常務(38)に相談した。小口さんは、知人でオンライン診療に力を入れている、ときのクリニックの今井紳一郎医師(42)と、百瀬さんを結び付けた。施設内には専用の個室を設け、デイサービス利用の前後に、オンライン診療ができるようにした。
薬局が運営主体であることが、大きな強みになっている。かかりつけ薬局の利用ももちろんできるが、ももせ薬局を利用すれば、「オンラインや対面で服薬指導が受けられる。薬もデイサービスで受け取れるように届けてもらったり、職員が取りに行ったりする」と百瀬さん。診療費や薬代はデイサービスが預かり、クリニックや薬局に渡す。一度も外に出ず、リハビリ、診療、薬の受け取りなどができるシステムだ。
現在、オンライン診療が受けられるのは金曜日。スタッフに百瀬さんの妻で看護師の真衣さんがいるため、「D to P with N」(患者が看護師などといるオンライン診療)も可能だ。「施設に来ると、毎回血圧と体温を測るので、定期的なデータを医師に伝えられる。体調の変化にも気付きやすい」と百瀬さん。パソコンだけでなく、スマートフォンを使えば、傷などの局所も大きく写して医師に伝えられる。
高齢者も家族も安心のサービス
松原地区はJRの駅から遠く、バスも通勤通学時間帯を除くと少ない。高齢者が病院やクリニックに通うには、タクシーを使ったり、家族が仕事を休んで連れて行ったり。「大変だから」と、患者が通院を諦める恐れもある。
「中山間地や過疎地には、こうした(1カ所で済む)サービスが必要」と百瀬さん。少子高齢化がさらに進むことが懸念される今、医者や病院、薬局に行くにも“ずく”が必要だ。デイサービスなら送迎があるため、「足」の心配をする必要がない。小口さんは「地域課題解決、高齢者や家族の負担や不安を小さくするモデルケースになるのでは」と力を込める。
コロナ禍でぐっと身近になったオンライン診療。うまく使えば、遠く離れて暮らす家族とも、高齢者の状態を共有できる。オンライン診療の可能性は大きい。らいふラボTEL0263・50・8442
