[創商見聞] No.106 Kitchen「Diavola 」 (盛合 充世)ディアボラ (奥原 麻央)

悪魔で1人イタリアン

【おくはら・まおう】39歳、松本市蟻ケ崎出身。松本第一高校普通科卒業。同市内や東京の飲食店で経験を積み帰郷。2019年、さやかさんと結婚。25年4月4日創業。

Kitchen Diavola

塩尻市大門七番町2−2吉江ビル1階北 ☎0263-87-5988

―料理をやってみないか
 子どもの頃は野球少年でリトルリーグのチームに所属していました。松本第一高校に進学してからも野球を続けました。
 卒業後はフリーターで、松本市内の居酒屋でホール業務関係の仕事をしていたところ、「料理やらない?」って声をかけてもらったのが始まりでした。
 野球少年でしたが、ものづくりは子どもの頃から好きだったので、そんなに抵抗感もなく始められました。
 和食関係の店でしたが、基本的なことは学べました。上京希望はあまりなかったのですが、一緒にやっていた先輩から、「やっぱり東京は知っていた方がいいよ」と話してもらったのがきっかけで、2006年、歳の時に上京しました。
 新宿のイタリアンレストランで学び始めました。おしゃれなイタリア料理の良いイメージがあっただけで、特に深いビジョンやコンセプトは持っていなかったと思います。「東京でイタリアンをやる俺、かっこいい」くらいのスタートでしたが、今のベースを作ってもらったと思います。
 当然最初は前菜担当、サラダのレタスを大量にちぎったり、ランチタイムにオムライスを作ったりしました。
 オーソドックスなお店や、上下関係がとても厳しい有名店など何軒かで修業を積み、年、歳の時に帰郷しました。実はこの時、既に創業の思いがあったのですが、みなかなか走り出せませんでした。
―何度も何日も
 地元の友人から紹介してもらい、飲食店を複数経営している藤原商店で働きました。イタリアンやメキシコ料理の店などで、店長業務を含め4年ほど働いた後、年に安曇野ブルワリーに移り、開業の仕事などをしました。
 コロナ禍になっていろいろなことを考えました。技術(味)に問題はないので、そろそろ自分でできるかな…、今の仕事で求められていることと自分のビジョンとはちょっと違うかも…、だからこそそろそろ…、でも業界の厳しさも知っているし…。
 妻ともいろいろ話しました。でも相談より愚痴の交ざった会話が続いたのかもしれません。
 「私や子どもを守ると考えてくれるのはうれしい。もじもじしちゃっているのも分かる。独立を怖いと思うのも分かる。でも、悩む姿ではなく、おいしいものを作れる自信を持ったまなざしでいいと思う」と話してくれました。
 簡単に短く話しましたが、「もっと自信持って、自分で始めろよ」と、優しい言葉だけでなく厳しい指摘まで。何度も、何日も後押ししてもらえました。時間がかかりましたが、自分で始めて良い時が来たと感じました。
 年になり、本格的に店舗にする物件を探し始めました。松本を中心に探しましたが、店の規模感や家賃など、なかなか条件を満たす物件が見つかりません。安曇野市で探したこともありました。
 難航しましたが、妻の地元の塩尻市で、イメージに合った今の物件が出てきました。大家さんも紹介してもらい準備が進みました。家族のバックアップを受け、決心が固まりました。
準備はしっかりしたかったので、塩尻商工会議所の創業スクールと松本信用金庫の起業セミナーを受講しました。
 創業計画や損益の計算、プレゼンなど苦手な発表もしましたが、数字がしっかりしているなどと講師から言ってもらえて自信になりました。
―仲間が駆けつけ
 SNSのおかげで高校時代の友人が、創業することを知って応援に駆けつけ、いろいろバックアップしてくれました。
 塩尻のいろいろな業者やコミュニティーを紹介してもらいました。セミナー後、疎遠になっていたのですが、塩尻商工会議所も再度紹介してもらい、開業届のアドバイスなどを受けることができました。
―気に入っている悪魔
 麻央(まおう)という自分の名前に絡めて、イタリア語で悪魔という意味の「ディアボラ」を店名にしています。かっこいいし、少しイタズラ感もあるし、気に入っています。
 カウンタ―6席を含め全24席です。ものづくりが好きと話しましたが、この店の内装関係も自分でやっていて、壁の塗装や床張り、修繕などをしています。月から5カ月くらいかけて、納得できる店の準備ができました。  
 イタリア・ナポリ地方の料理を多く学んできたので、メニューはトマトベースが多い構成です。パスタは全て生麺で楽しめます。パスタ5種のほか、鶏、豚、牛の煮込みやソテーなど、総メニュー種前後で、通常のご案内ができるようにしました。
 イタリアワインだけにすることも考えましたが、塩尻ワインも赤・白を用意しました。塩尻ワインとよくマッチングできる料理を、これから考案していきたいです。
 店の雰囲気については、妻とも話しながら進めてきました。女性も男性も1人で来られるカジュアル感を出せたらいいと考えています。
 何しろ悪魔という店名ですから、かしこまってはいません。「1人イタリアン」。いつでも来てください。(聞き書き・田中信太郎)