カスハラ-不満の連鎖 ACジャパン広告学生賞 小山詩乃さんらグランプリ

「一瞬でもハッとするCMを」

安曇野市穂高有明に実家がある小山詩乃(うたの)さん(21、長岡造形大=新潟県長岡市=4年)らは、公益社団法人ACジャパンが主催する第21回ACジャパン広告学生賞のテレビCM部門で、最高位のグランプリを獲得した。
作品タイトルは「不満のバトン」。最近問題になっている、顧客からの理不尽な迷惑行為、カスタマーハラスメントをテーマにした。30秒の作品で、ハラスメントを受けた店員が、客と立場が変わればクレーマーになるなど、不満がどんどんつながっていく作品だ。
案を出すことから始まり、撮影、編集と1カ月半ほどかけた力作。小山さんは「まさかグランプリを取れるとは思わなかった。めっちゃうれしい」と笑顔で話す。
7月からBS放送の11局でオンエア予定。

苦情を受けた経験を元にし

謝っていた人が他店の客になり、値引きを要求、今度は店員がカスタマーサービスに電話でクレーム、サービス担当者が宅配便の配達に遅いと文句を言う─。
長岡造形大造形学部視覚デザイン学科で学ぶ、小山詩乃さんと長野市出身の4年生・竹前理紗さん(21)の2人が中心になって作った、「不満のバトン」。第21回ACジャパン広告学生賞でグランプリに輝いた作品だ。
小山さんがアルバイトをしている時、苦情を受けた経験が元になっている。「多くの人が客と店員と両方の立場を経験するはずだが、思いやりを忘れてしまう人がいる」とし、立場の変化がリレーのようにつながっていく様を表現。カスタマーハラスメントの現状を問いかける作品に仕上げた。
小山さんは中学2年生の時、京都から安曇野市に転居。豊科高校吹奏楽部の演奏を聴き、同高進学を決めた。コロナ下で思うように練習できず、中止になる大会もあり大変だったが、第18回日本サクソフォーン協会アンサンブル・コンクールで金賞を受賞した。

転機は授業の動画CM撮影

高校の美術の授業で、動画でCMを撮影したことが転機となった。架空の商品、飲料水「豊水」をいかにPRするか―。吹奏楽部の「吹」を「水」にかけ、動画に自分たちの演奏も取り入れた。「映像を使い、相手に商品の魅力を伝える楽しさを感じた」。視覚デザイン全般を学びたいと長岡造形大に進学した。
CM演習の授業の一環で、ACジャパン広告学生賞に応募する作品を制作した。東京と新潟で俳優を募集し、小道具を用意するなど準備。俳優の立ち位置、カメラやマイクを置く場所を決める、せりふの速度を調整する|など、何度もテストを重ねた。リレーしていく部分は長回しの一発撮りで、68回目でようやく納得する出来に。30秒という枠に収めるのも苦労したという。
「賞を目標に細かい部分にもこだわった。映像を学んでいるから妥協したくなかった」と小山さん。自己満足で終わらせず、相手に伝えるには、チームの力を最大限に生かすには|。多くを考え、議論を重ね、見る人の視点から見直すなど、「伝わる映像」を心がけた。「受賞を聞いた時は驚いて、ベッドから転げ落ちた」
現在4年生で、就職活動の真っ最中だ。CMディレクターを目指している。「驚きがあり、面白いと思ってもらえるCMを作りたい。一瞬でもハッとしてもらえたら」。小山さんのCMが流れる日が楽しみだ。
今回、テレビCM部門には、過去最多の45校330作品の応募があった。