フォトグラファーやまぐちなおとさん初の作品展  松本「ギャラリーノイエ」4月21日まで

松本市のフォトグラファー、やまぐちなおと(本名・山口直人)さん(32、松本市城東1)の初の作品展「UTSURU」が、カフェ「ギャラリーノイエ」(同市大手3)で開かれている。「人と真っすぐ向き合いたい」。対話しながら撮影すると、その人らしい自然な表情になるという。
愛知県出身。街の雰囲気や人の温かさに引かれ、2020年に塩尻市に移住。カフェ開店やイベント出店、シェアハウス運営、銭湯の店長など、さまざまなことに挑戦し、地域に溶け込んできた。写真もその一つで、根源には「地域の人の魅力を知ってほしい」という強い思いがある。
23年から本格的に写真家として活動。今回は対話を大事にした作品がメインだ。「人間らしさを感じてもらえれば」

写真ってやつが、いとおしい

やまぐちなおとさんの初めての作品展は、「UTSURU」をテーマに昨年から約1年かけて撮りためた、ポートレート(人物写真)がメイン。SNSで募集し、依頼があった男女16人を撮影、A2判のパネルに仕上げ展示している。
普段と異なる作風に挑戦しようと、撮影に取り組んだ。人生相談や挑戦してみたいことなど、対話を重ねていくと、内に秘めたものがにじみ出てくる。くしゃっと笑う自然な笑顔。何かを思う強いまなざし|。人にはそれぞれ、いろんな思いがある。「色がないからこそ人の表情がよく見える」と、あえてモノクロにしている。作品横には、被写体となった人たちの感想も添えられている。
室内の照明一つで被写体の自由な姿を撮影した人物写真とは別に、乗鞍高原や松本市街地、諏訪湖など、県内の風景をメインに撮影したシリーズ作品「染─sen─」も5点ある。屋外の自然光で風景を生かし、服装やポーズを考えて撮影。前者とは対照的な方法で撮影し、県内の魅力を伝えている。

2023年から本格的にフォトグラファーとして活動する。昔は写真の道に進む気はなかった。カメラを手にしたのは20歳の時。「平穏な暮らしよりも、てんやわんやしている人生の方が面白い」。夏は海、冬は雪山と、20代の頃は日本各地を旅するように暮らしていた。場所も暮らし方も異なる環境で、さまざまな日常を見たままに記録する目的で、どこに行くにもカメラを持ち歩いた。
旅を続ける中で、居心地の良さに引かれ20年、塩尻市に移住。地域のイベントなどを数多く開催する、松本平の魅力的な職人や作家、個人店の存在を知り、素晴らしい手仕事人の魅力を伝えたいと、自主企画「手と仕事」をテーマに個人で撮影を始めた。
何をどう残したいのか─と自身に問いかけ、葛藤した時期もあったという。だが、撮影を通して多くの出会いがあり、新たな地域の魅力を知った。写真を通して伝えられることが、確かにあった。「写真ってやつが、一段といとおしくなった」。発信を続けるうちに、撮影の依頼が舞い込むようにもなった。
「次はどんなものを撮るんだろう─。常にワクワクできる自分でありたい」。カメラを手にして約12年。クラウドファンディングで多くの人の支援を受け、個展を開けた。これまで撮りためた作品や支援者のお気に入りの写真など、約200点も見ることができる。
4月21日まで。午前10時~午後6時。期間中は会場にいる予定。