
農地維持に地域の共助
草木が芽吹く時季、雑草も目を覚ます。農繁期を見据え、手が回らない田畑の草刈りを手分けしてやろうという有志の集まりが、松本市和田地区で発足した。担い手不足を共助で補う取り組みだ。
15日、地区内の休耕田に作業着姿の男性たちが集まった。「畦畔(けいはん)管理サポート組合」のメンバーだ。
畦畔とは「あぜ」のこと。ここに生えてくる雑草が問題だ。
密生した草根があぜの崩壊を防いでくれるので、除草剤で枯らすわけにはいかない。
かといって、茂らせておくと、害虫のすみかになる。例えば、カメムシ。暑かった昨夏は、和田地区の田んぼも被害に遭い、コメの収量に響いたという。
結局、刈るのが一番だが、この作業は体力を消耗する。炎天下ではなおさらだ。
JA松本ハイランド和田支所が一昨年と昨年、組合員にアンケートで課題を尋ねると、草刈りが一番に挙がった。高齢の農家からの訴えが目立った。
どうするか|。他の地区では大規模法人などがまとめてやる例があるが、個人農家が主の和田地区ではそぐわないと、有志の組合をつくることになった。
呼びかけに、定年退職後の兼業農家を中心に26人が応じた。班分けして、受託した田畑66ヘクタール分のあぜを年4回ずつ刈って回る。
使う農機具は自前で、燃料も自弁だ。委託料をもらうが、メンバーで分けると小遣い程度。参加は地域のためという意識が強い。
会社員の吉田佑基さん(29)は、農業をする父親と参加した。周囲の高齢化に「自分たちの代になったらどうなるのか、人ごとじゃないと思った」という。
発足したばかりの組合だが、受託した田畑は地区内の1割を超える。田中孝人組合長(75)は「手が付かないほ場は増えていく。どこまで組合で管理できるか、草刈りは最初の試み」と話す。
個人で農業をしながら地域全体の農地維持にも関わる、いわば「和田モデル」のスタートだ。