
川魚文化を守る新たな可能性
長野県発のブランド魚「信州サーモン」。豊かな脂乗りが特長で、口に入れるととろけるような食感が広がる。県内の旅館や高級料理店で刺し身やすしとして重宝される一方で、一般家庭に出回る量は少ない。
信州サーモンはおいしさだけでなく栄養価の高さでも知られる。良質なタンパク質、DHAやEPA、皮膚などの健康を支えるビタミンB群も豊富に含まれる。抗酸化作用が期待されるアスタキサンチンも多く、健康志向の高まりと共に注目されている。
「もっと気軽に家庭で味わえる方法はないのか」。キタヤマンさん(本名非公表、松本市城西)は、新たな可能性を追求し、冷凍餃子(ギョーザ)「プレミアム信州サーモン餃子」を発案した。
物産展に出店大きな手応え
キタヤマンさんが、家業である川魚卸「北山養魚所」(松本市城西1)に入ったのは、4年前。跡継ぎで3代目の兄・啓司さん、妹の理恵さんと共に、家族経営を支えている。
東京で飲食店を経営していた経験を生かし、プロデュースと営業を率先して担ってきた。本名を名乗らないのは「本名を隠して社会貢献をすると、タイガーマスクみたいに格好いいでしょう」。
アトピーやぜんそくに長年苦しんできた自身の経験から、「肉が食べられない人や、健康志向の人が、安心して食べられる食品を」との思いがあった。実家の川魚を使った体に優しい冷凍食品の開発に取り組んだ。川魚文化を守ろうと、信州サーモンの新たな販路を模索。たどり着いたのが冷凍餃子だった。
化学調味料や着色料などの添加物を一切使わない無添加で、火を通した時に信州サーモンとしての味が消えないよう工夫を重ねた。
製造を委託しているのは、「信栄食品」(同市並柳4)。原材料には、ワサビ田から引く湧き水を使ったいけす(安曇野市明科中川手)で育てた信州サーモンを使用する。
2023年11月、名古屋市の名鉄百貨店で開催された物産展で、初めて販売。翌年の出展時には、前年の来場者が再び来店し「また買いに来た」と声をかけてくれた。キタヤマンさんは、その反応に大きな手応えを感じたという。
同年、春と秋の2度にわたり、東京ビッグサイト(東京都)で開催されたグルメ&ダイニングスタイルショーに、県代表として出店。物産展での実績と、今後の成長の可能性が評価されて選ばれた。
「信州サーモン」というブランドと「冷凍餃子」という意外な組み合わせが、来場者の関心を引いた。調理方法は一般的な冷凍餃子と同様。フライパンで焼くのはもちろん、鍋に入れるなど、アレンジの幅は無限大だ。
キタヤマンさんは「信州サーモン以外にも、ニジマス、イワナといった自社で扱う地魚を使った新しい商品を作っていきたい」と抱負を語る。
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1パック12個入り、価格は小売店によるがおおむね千円から。県内では、松本市深志1の「アルピコプラザ」地下1階「松本のおみやげやアルピコプラザ」、同市梓川倭の農産物直売所「清流の里梓川」などで販売。通信販売は「ギフト・プチギフトのプレシア楽天市場店」で、電話(0263・50・9677)かこちらから。