
松本山雅FCのホーム試合の運営ボランティアに今季から、全社を挙げて参加している企業がある。食品包装用パッケージの製造販売を手がける「三洋グラビア」。本社がある伊那市から、試合ごとに社員5~10人が代わる代わるサンプロアルウィンにやってくる。きっかけは昨季の衝撃的な幕切れという。
昨年12月7日、同社創業者の孫でもある原卓実営業本部長(34)は、J2昇格プレーオフ決勝の中継に見入っていた。残り3分の失点で山雅の昇格はふいに。「駄目だったか…」と落胆すると同時に、「今だからこそ応援したい」という思いも湧いた。父の敬明社長(65)と「わずかでも力になるか」と話がまとまった。
会社が、地域貢献活動により力を入れようとしている時期でもあった。山雅とは縁がなかったが、やはり本業以外で幅広く地域活動をし、認知度は全県で高い。伊那から支援する価値があると判断した。試合時に広告看板は出すとして、「それだけではもったいない」と試合運営のボランティアを申し出た。
参加者は毎試合、約160人の従業員から募り、製造や企画、営業などの部門をまたいで組み合わせるようにしている。「会社を縦割りでなくフラットにしたい。他人を支援するという共通の目的の下、同じ場所で同じことをするのがボランティア」と原営業本部長。組織づくりの効果も狙う。
当日は車に分乗して伊那谷を出発。キックオフ5時間前の全体ミーティングに出て、持ち場に散る。受付や会場整理などが多い。
3日のツエーゲン金沢戦は6人が参加。唐澤常幸さん(64)は、息子がかつて山雅の育成組織でプレーしたといい、サンアルの試合は何度も観戦。勤務先で再び山雅とつながり「すごくうれしかった」。
山雅にさほど興味がないという星野祐雅さん(27)は、先にボランティアをした同僚に影響された。「普段は無口な人が『楽しかった』と話し、やってみたくなった」
取引先などとは、山雅が共通の話題になるように。「最近、会社の事業が拡大している。山雅との関係が一助になっている」と原営業本部長。
同社担当のボランティア業務は、キックオフで一区切り。試合の途中からでも生観戦を楽しむ。ただ、ナイトゲームは伊那への帰りが深夜になることもあり、ボランティアへの参加は見送っている。