臨床心理士・公認心理師の上平加奈子さんに聞く 休み明けの“行き渋り”対処法

親が決めず子どもの話を聞いて

GWなどの長期休み明けに、学校に行き渋る子どもが増えるといいます。わが子が「学校に行きたくない」と言ったときの対応について、臨床心理士・公認心理師の上平加奈子さん(塩尻市)に聞きました。
─GW明けに行き渋る子が多いのはなぜですか。
「新年度になると友達や先生が変わったり、勉強も難しくなったりと、子どもたちは新しい環境の中で頑張ります。それまでも無理して学校に通っていた中、さらに頑張って苦しくなり、心と体にSOSが出てくるのがこの時期だと思います」
─子どものどんな様子に気をつけたらいいですか。
「特に休み明けの3日間は注意が必要です。おなかや頭が痛い、気持ち悪い、落ち着かない、宿題が手につかない、部屋に閉じこもる、気分が落ち込む、睡眠が安定しない、家族との会話が減る…今までと違う“変化”に気をつけましょう。休んだ方がいいのに休めない子も心配です」
─行き渋られたらどう対応すればいいですか。
「親が『行きなさい』『休みなさい』と決めず、とにかく子どもの話をよく聞きます。こうしたら、ああしたらは言わないこと。『学校に行きたくない』と言うのは、子どもにとって最終的なSOSです。でも、親はそこがスタートと捉えてしまい、『もうちょっと頑張ってみよう』などと言ってしまうことがあります。
子どもが育っていく上で一番大切なのは、安全で安心していられることです。ちょっと何かしたら怒られる、家庭内のけんかが絶えないという状況では安心できません。家族に安心して話せる人がいることが大事です。
学校を休ませるかどうかは、親もすごく葛藤しますね。長い人生で考えればたった1日。でも子どもにとっては、あの日のことが…とトラウマになってしまうこともあります。いったん休ませるという選択肢も持っておいてください。
子どもを休ませると決めたら文句は言わないこと。子どもが家で元気だと、つい『元気なら行きなさい』と言いそうになりますが、ぐっと我慢。その場を離れ、『そりゃイライラするよね、私、頑張ってるね』と自分に言ってあげましょう」
─学校への対応はどうしたらいいですか。
「早い連携が大切です。遠慮せず、子どもの様子を伝えてください。そして親や先生がどうさせたいかではなく、子どもがどうしたら安心していられるかを考え、具体的に対応します。もし『1時間だけ行ける』と言ったら、必ずその通りにし、親も先生も守ります」
─話を聞くときのポイントは?
「親はとかく子どもの行動に注目しがちですが、感情に焦点を当てて話を聞き、その言葉を返すようにします。子どものポジティブな感情は親もうれしいので言葉にしやすいですが、ネガティブな感情も言葉にすることが大切です。
子どもが否定的な感情を持った時、『悲しかったんだね』『不安になっちゃうよね』と受容する言葉で表現します。その感情も自分の中にあっていいものと受け止められることが、前に進む一歩につながります。
親は自分を責めてしまいがちですが、いろいろな環境が関係しています。対応の仕方は子どもによって違いますが、安全で安心していられるようにし、子どもの心の声に耳を傾けると見えてきます。どうしたらいいか分からなくなったら、周りの信頼できる人や専門家に相談しましょう」

【うえひらかなこ】一般社団法人長野トラウマケアセンター理事、県スクールカウンセラー。塩尻市大門で「カウンセリングルームあかり」を開く。高校生と中学生の子育て中。=ウェブサイト