寄り添う情熱 松本の療養通所介護「あおいそら」

一人じゃないと思える支援を

松本市笹賀の「療養通所介護あおいそら」は、「療養通所介護」(医療型デイサービス)の事業所だ。難病やがん末期など、医療的ケアや看護師の常時観察が必要な要介護者も利用できる、介護保険サービスの一つ。 看護師が送迎時から常に付き添う「目の届く環境」で、医師らと連携したケアや、日常生活の支援を個別に受け日中を過ごす。一般的なデイサービス利用が難しい人にも外出の機会をつくり、家族の休息にもつなげる。 療養通所介護には、人材確保や経営の難しさなどの課題があり、サービスを行う事業所は全国で約80、県内でも数少ない。「一人じゃない、諦めないで」。事業開始から6年、管理者の渡辺功子さん(63)らスタッフの情熱が、在宅生活を支える。

人生の“チーム”手間を惜しまず

「療養通所介護あおいそら」を運営するのは、訪問看護事業と旅行事業を展開する「青い空」(松本市笹賀)。療養通所介護(医療型デイサービス)は、介護保険の地域密着型サービスで、同市内の要介護1~5の人が対象。受け入れは1日最大6人、自宅から施設まで送迎し、平日午前8時半から午後5時半まで営業する。医師やケアマネジャー、訪問看護と連携し、看護師が状態観察や個々の状態に応じた医療ケア、食事や排せつの介助、身体の清潔保持などを行う。
現在は12人の看護師が、訪問看護との兼務(シフト制)で対応。送迎の車内でも必要な処置や体調変化に対処し、明るく開放的な施設の常に目が届く環境で、個別ケアに当たる。
外出は、利用者の気分転換や孤立解消などに加え、家族の休息や負担軽減にもなる。主任の一倉真佐子さん(58)は「訪問看護などを利用していても家族の負担は大きい。日中だけでも利用者と離れることで気持ちの仕切り直しになる。本人が外出して楽しそうな姿や、変化を見て喜ぶ家族の様子が、何よりうれしい」と話す。

スタッフが一枚の写真を見せてくれた。難病を患い人工呼吸器を付けた寝たきりの利用者に、看護師が付き添って出かけた花見の一こまだ。家族だけで外へ連れ出すのは難しいケースだが、春の香りや風に触れ、穏やかな表情を見せている。買い物や図書館利用、思い出の場所の訪問…。送迎途中や利用時間内の近距離外出にも、体調を見ながら対応している。
別の寝たきりの利用者の希望に応じ、市内の霊園へ墓参りに行った。園内の道は平らではないため、ストレッチャーを押さず持ち上げて移動。運転手が自発的に現場を下見し、実現方法を探った。「最初から『できない』ではなく、どうしたらできるかを、みんなが考えている」と管理者の渡辺功子さん。採算度外視の行動に情熱がにじむ。
余命を知り、人との関わりを拒絶する利用者や、気持ちが揺れる家族もいる。連絡ノートなどで家族とこまめに連絡を取り、手間を惜しまず寄り添う。渡辺さんも一倉さんも、看護師経験のほか親の介護やみとり、入院生活などを経験。「それらを還元できたら」と口をそろえる。利用者も家族もスタッフも一人にせず、“チーム”でおのおのの人生を支える。

渡辺さんは長く病院勤務を経験。中信地方で複数の訪問看護ステーション設立に関わった後、2011年に会社をつくり、訪問看護事業を始めた。
訪問先で当事者の声を聞き、「一般的なデイサービスでは受け入れが難しい人と家族の、負担を軽くできないか」と感じた。療養通所介護を知り、19年3月から事業開始。看護師の確保が課題だったが、育児中も働きやすいといった環境を整え、人材を集めた。
「6床のささやかな受け皿だが、地域に知ってもらい、諦めずに一人じゃないと思える支援を続けたい」。手探りと手応えの6年を振り返り、揺るがない気持ちを語った。あおいそらTEL0263・57・5954