
塩尻市洗馬の本洗馬歴史の里資料館で開かれている、「岡本美世乃(みよの)写真展 On Beautiful World~美しい信州~」。自然をさまざまな視点で切り取った36点が並んでいる。
上高地、寝覚の床、霧ケ峰高原など、景色は時に雄大で時に繊細。撮影後の加工、修正はほぼなく、そのままの姿という。
撮影した岡本さん(47、塩尻市)は信州の自然に魅了され、石川県から移住して7年。会社員として働きながら撮影活動を続ける。県内での個展は初めてだ。
「身近にある自然の素晴らしさを移住者として届けたい」と岡本さん。信州の魅力を再発見できる作品展だ。
「実は自然ってこういう姿」
塩尻市の本洗馬歴史の里資料館。岡本美世乃さんの写真展で、会場に入ってすぐに目に飛び込んできた作品が「霧ケ峰高原」。単独で行動することが多い雄ジカの群れを、草原の一角でとらえた。
作品「寝覚めの床」は、花こう岩の中を流れる木曽川の、小さな水の渦。岩と川の造形美がピックアップされる景勝地で、あえて水の渦に着目したのが新鮮だ。
館内に設けた来場者の感想ノートには、「身近な景色の見方が変わるよう」「光のとらえ方が素晴らしい」「とても幻想的で別世界」などの言葉が寄せられている。
石川県生まれ。小さい頃、上高地の写真集を見て心に残ったという。2013年に初めて日帰り旅行で訪れ、実際に目にした景色に感動した。
信州に魅了され、会社勤めの傍ら石川県から毎月、撮影のため長野県に通うように。カメラの知識はなく、独学で技術を習得し、コンテストに出展。17年、「Sony World Photography Awards」の最終10点に選ばれた。
40歳になり「自分自身をステップアップさせたい」と転職を考えた。前年のコンテスト入賞も自信になり「信州に移住して撮影活動と両立させて働きたい」と決心。県内の移動に便利な塩尻市を選んだ。
現在は休日に上高地や霧ケ峰高原など、県内全域で撮影。「同じ場所に行っても毎回、違う写真が撮れ、もっと撮りたいという気持ちになる。よくある風景でなく、面白いと思えるものを探すのがこだわり」という。
知人のいない信州に移住して7年。今回の企画展は、以前、同館の写真展を見に来た岡本さんのインスタグラムを職員が見て、「すてきな写真を撮っている」と感動し声をかけた。岡本さんは「自分が有名になるより、信州の素晴らしさを知ってもらえるなら」と快諾した。
芸術的な作品が多いが、どの写真もレタッチ(撮影後の加工)はほぼない。「実は自然ってこういう姿を見せているんですよ」と岡本さん。
今後は日常の中で飾ってもらえる写真を撮ることが目標の一つ。「信州の自然は奥深い。その素晴らしさを撮り続けたい」
写真展は7月6日まで、開館日時は金~日曜日と祝日の午前10時~午後5時。大人150円、中学生以下無料。同館TEL0263・54・5520