
スポーツを通じて仲間の大切さや成長する喜び、結果が出なくても努力した過程の大事さなどを子どもたちに知ってほしい―。県内最大級のキッチンカーのイベントを企画・運営する牟禮和貴さん(29、松本市美須々)のもう一つの顔は、甲子園を目指した元高校球児。4月から市内のバッティングセンターで野球教室を始めた。
環境変化に危機感じ団体も
小学5年生で野球を始め、松本工業高校在学中まで続けた牟禮さん。卒業後に就職したが、不規則な業務もあって体調を崩して退職し、半年ほど引きこもりになった。そんな時に外に連れ出してくれたのが、かつての野球の仲間たちだった。
その経験から「体を動かしながら仲間と過ごした思い出や、その時に培った友情は一生もの」と実感。スポーツ教室を経営する会社に再就職して小中学生の指導法などを学び、これまで200人以上に野球を教えてきた。
昨年、市内唯一の村井バッティングセンター(村井町南2)が、経営難で存続の危機にひんしていると耳にした。「地元のセンターを残したい。経験を生かして地域に貢献したい」と会社を退職し、野球教室「TRY SLUGGER BASEBALL SCHOOL」を始めることに。
指導は個別で、子どもがチームの練習で感じた課題の解決や、目標を達成するための細やかな指導を心がける。
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ケバブのキッチンカーで生計を立てる牟禮さんは2022年から、「信州キッチンカーフェスティバル」を企画・運営。4回目の今年は今月3~5日に塩尻市の平出遺跡公園で開催し、連日約40台が出店して延べ1万2000人が来場した。このイベントにも毎回、さまざまな競技が体験できる「スポーツマルシェ」やダンスの演技発表など、体を動かすイベントを組み込んでいる。
いま心配なのが、国と自治体が進める中学校部活動の地域移行。「部活がなくなると、子どもがスポーツに関わる機会が減るのでは」と危惧し、野球教室を始めるのと同時に、子ども向けのスポーツイベントを催す「信州キッズスポーツ協会」を設立した。
「(小学生時の競技経験者が多い)クラブチームに入るのは『ハードルが高い』という声も聞く。クラブチームを集めて体験会を開くなどし、多くの子どもにスポーツをする機会を提供したい」と今後を見据える。
野球教室は無料体験を実施中。問い合わせは同協会のホームページから。