大糸線走ったディーゼル車両「キハ52 125号」千葉で60年の現役生活に幕

かつてJR大糸線の南小谷―糸魚川間を走り、沿線住民の足となって活躍したディーゼル車両「キハ52 125号車」が、遠く千葉・房総半島の「いすみ鉄道」(本社・千葉県大多喜(おおたき)町)で通算60年に及ぶ現役生活の幕を閉じた。近年は希少な存在で鉄道ファンが注目。同鉄道大多喜駅で行われた引退記念イベントでは、大勢の人がその姿をカメラに収めていた。
125号車は国鉄時代の1965(昭和40)年製造。ディーゼルエンジンを2基搭載し、登坂に強い。各地で乗客を運び、95年10月糸魚川配属後、大糸線南小谷以北の非電化区間を走った。
2010年、大糸線で廃車の予定だったが、いすみ鉄道へ移籍。小谷村民らによるお別れイベントが催され、感謝の声を背に千葉へと向かった。
同鉄道では翌年4月から、観光列車など看板車両を務めた。新型車両の登場で全国のキハ52形が次々と姿を消す中、昭和、平成、令和と走り続けて最後の1両となり、鉄道ファンの人気を集めた。国鉄時代の車体の塗装や車内の扇風機が、往時をしのばせた。
同鉄道では昨年10月、脱線事故があり、以後全線で運休を余儀なくされた。125号車も9月の運転を最後に、大多喜駅の車庫に停留。復帰を望む声も強かったが、老朽化が激しく部品調達も大変なため引退となった。
同鉄道は13年余の貢献をねぎらおうと、4月27日と5月11日、同駅構内で乗車体験会や写真撮影会などを開催、計約1100人のファンが詰めかけた。神奈川県鎌倉市から11日に来た男性(51)は「ディーゼルエンジン独特の匂いに、子どもの頃慣れ親しんだディーゼル列車を思い出しました」と懐かしんだ。
長年、125号車に乗務した同鉄道の高崎浩・主任運転士(64)は「国鉄、JR、いすみ鉄道で通算60年もの間、よく頑張ってくれました」。
6月にも引退イベントを行う予定。同鉄道TEL0470・82・2161