
松本市の松本情報工科専門学校(城西1)事務員の下川幸子さんの母親が、生前に乗っていた1980年代製の自転車がレストア(復元)された。現在の自転車と異なる構造や部品が多く、同校スポーツバイシクル学科が教材として譲り受け、今春卒業した学生2人が作業した。
自転車は、母親が昨年亡くなり下川さんが処分するつもりだった。しかし、ワイヤでなく金属棒で引く「ロッドブレーキ」などが現在では珍しく、「機能を優先すると消えていくものが残っていた。学生に本物を見てほしかった」と同学科の吉澤義修教諭(52)。
レストアを手がけたのは渡邉稜太さん(25、埼玉県)と南村蓮さん(20、木曽町)。2人は昨年末から卒業前まで放課後などに計2カ月ほど作業した。使える部品は残しつつ、籠は廃業した自転車店から譲り受けた廃品を切って再利用。フレームはさびを隠すためペンキが塗られていたが、地道に磨いて元の色に戻した。
卒業後は地元に戻り、スポーツバイク専門店に勤める渡邉さんは「現在の自転車にない独特な構造が多く、違いに驚いた。完成時を想像しながら、再利用する物と交換する物を組み合わせるのが面白く、よい経験だった」と振り返る。
よみがえった自転車を前に下川さんは「母が喜ぶ姿が目に浮かぶ」と話している。