助産師で写真家 松本の上滝彩香さん 育児相談や撮影で産後のサポートを

生まれてきたばかりの赤ちゃん、すやすや眠る姿を見つめる家族、泣き顔、笑顔、誕生日…。赤ちゃんと過ごす日常のいとしさにカメラを向ける松本市里山辺の上滝彩香(かみたきさやか)さん(31)は、助産師で写真家、2児の母だ。
病院に勤務しながら、自営業なら認められる副業制度を活用。中信地方で出張撮影やイベントでの撮影に取り組む。
きっかけはコロナ下の面会制限で、家族に会えない出産後の母親に、助産師として接したこと。新しい命を迎え孤軍奮闘する母の姿を伝えようと、家族に代わってスマートフォンで撮影した。
幸せでありつつ不安も伴う出産、育児。産後ケアの一つとして育児相談や撮影を通し家族を後押しできたら─と考え、レンズを向ける。

一生懸命なママ、パパのために

5月21日の昼、助産師で写真家の上滝彩香さんが「産前産後ケアハウスまんまる」(松本市蟻ケ崎4)で「授乳フォト撮影会」をしていた。
母乳を飲む赤ちゃん、その姿を見つめる母親、穏やかなひとときにカメラを向ける上滝さん。「胸が張って痛くないですか?」「赤ちゃんの普段の様子はどう?」など、授乳の相談にも乗りながら進めた。
定期的に開き、キャンセル待ちとなる人気の撮影会。1歳の長女と参加した太田七虹(ななこ)さん(29、同市梓川梓)は「授乳は母親にしかできない、今だけの大切な時間。絆を撮ってもらえてうれしいし、一生の記念にしたい」。
上滝さんは「授乳が円満にできた人はいない。写真家としてだけでなく助産師として、お母さんをねぎらえたり、寄り添えたりできたら」。2児の母親としての経験も交えて接している。

松本地域の出産 よりよくしたい

松本市出身。飯田女子短期大(飯田市)の看護学科と助産師専攻で学んだ。産婦人科病棟の実習中、自分の誕生日と同じ日の出産に立ち会い、退院まで担当した。病院にいるのに、育児についてスマートフォンで調べる母親の姿を見て、「気軽に相談してもらえる助産師になりたい」と実感した。
2016年、松本市内の病院に就職し、18年に結婚。20年の新型コロナウイルス緊急事態宣言中に長女を出産した。人生の節目でもある幸せな時に家族と隔離され孤独を感じた。人とのつながりの大切さを痛感したという。23年に次女を出産した。
病院では夢中で働いてきたが、育児休暇中に助産師が集まるカフェに参加し、同じ職業でも助産院を開いている人、カメラで撮影活動をする人など、さまざまな生き方があることを知った。
もともとカメラが趣味だったこともあり、22年、県外で活動する「助産師フォトグラファー」のオンライン講座を受講。当初「自分に同じことはできない」と思ったが、講師から「人と比べず、やりたいことに突き進んでみたら」と言われ決心。友人や口コミを頼りに撮影を始めた。
提携する助産院で出産時を撮影するほか、依頼者の自宅に出張し、赤ちゃんと家族の日常をカメラに収める。今月は「あゆみ助産院」(同市渚3)で「お産の写真展」を初主催し、自身の写真や一般から募った44点を展示した。
「どんなお産でも正解、不正解はない。全てが肯定され、温かく包まれる」と上滝さん。その姿を多くの人に知ってもらい、松本地域の出産をよりよくしたいという。
6月末で病院を退職し、フリーの助産師になる。助産院を開くのが目標で、写真家としての活動も本格化させる。出産後、1カ月健診までの孤独に陥りがちな母親を、助産師写真家として支えたいとも考える。
大変に思える育児も、写真で客観的に見ると、大人は自分の優しい視線に気付くことが多いという。「一生懸命、子育てしているママ、パパが幸せでいてほしい。そのために写真を撮っていきたい」。上滝さんの活動や連絡先はインスタグラムに掲載している。