
「人生の頂は80歳」。そう定めていた三井田勝一さん(池田町会染)は先月、その頂上に到達した。これからは多彩な趣味を続けながら、「急がず、慌てず、滑落したり、道に迷ったりすることなく下山するつもり」。自身の人生の歩み方を、こう描いている。
数ある趣味の中で歴史が長いのは読書。大学時代から本に親しみ、社会人になってからは転勤も多くあったが、行く先々で地元の図書館に通った。
「図書館という存在」への感謝の思いから2023年、池田町図書館へ100万円を寄付し、愛読書100冊ほどを寄贈した。同館内に三井田さんが寄贈した本のコーナーが設けられ、本人の希望で「文楽(ぶんがく)・白風(はくふう)文庫」という名前が付けられた。収められている本のジャンルは、思想・宗教、歴史、芸術、古典、日本文学、外国文学など多岐にわたっている。
また23、24年には安曇野市中央図書館にも合計30万円を寄付。24年8月~25年3月には同図書館の支援で月1回の読書会「白風文庫の会」を開き、参加者で福沢諭吉の「学問のすすめ現代語訳」(斉藤孝訳)を読み進めた。今年4月からは「口語訳古事記神代(かみよ)篇」(三浦佑之訳)に取りかかっている。
「白風」は三井田さんの別名。「白」は中国、唐代の詩人・李白に、「風」は平安時代の貴族で能書家・小野道風にあやかったという。
昨年から参加している松本市の郡上恭子さんは「『学問のすすめ』は1人では読み切れなかった。神話も好きなので、今年も通っている」と、この集まりが気に入っているようだ。
他の趣味の中の代表格は、「チェロ演奏」。50年以上続けている。22歳の時、この楽器の音に魅せられ、27歳から学び始めた。埼玉県浦和市(現さいたま市浦和区)に暮らしていた30歳の時に、地元の楽団に所属し、「オーケストラデビュー」。生まれ故郷の新潟県柏崎市で仕事をしていた時は、「柏崎フィルハーモニー管弦楽団」に所属し、団長を務めたこともある。
現在は、ビオラを弾いている妻の雅子さんと一緒に、松本交響楽団に在籍している。
趣味は他にもスキー、野菜作り、海外旅行などと幅広い。「まさに『継続は力なり』と思っている」と、これまでの「趣味人生」を振り返った。
◇
損害保険会社に勤務し、転勤が続いた。松本市に赴任中、池田町に土地を買い、その後、家も建てた。
49歳で退職。実家のある柏崎市に戻り、父が営んでいた損保代理店を引き継いだ。仕事の傍ら、実家の蔵を改装し、コンサートを開くなどしてチェロ演奏を楽しんだ。
2007年、中越沖地震で母屋も蔵も倒壊。その後しばらくは、かろうじて倒壊を免れた事務所と池田町で2拠点生活をしていたが、12年4月に池田町に完全移住した。
人生の「てっぺん」とした80歳を迎え、「これからは、ゆっくり楽しもうと思う」。悠々自適な生活を送るつもりだ。