
地域発信できるイベントも提案
「花火には人を元気にする力がある。それを地域経済の活性化などにつなげられたら」。そう熱く語るのは煙火店・華松(はなまつ)煙火(松本市島内)の上條僚士専務(34)だ。打ち上げ花火などの製造のほか、花火大会の企画・演出なども行う創業150年を超えた老舗の6代目。花火をメインにした「劇場型イベント」に力を入れている。
「コロナ禍で、売り上げが9割減という時期もあったが、現状はコロナ以前より、高い水準になっている」
好調の理由は、コロナ禍が落ち着いたこともあるが、近年、全国の煙火店同士の、横のつながりが活発になったからという。
「これまでは、地元の祭りや大会に、他の業者を呼ぶことはなかったが、今はそれをお互いにやっている。花火を上げる機会が増えた」と説明する。
自身も公益社団法人全国煙火協会青年部の役員として活動しながら、その流れを推進。現在は年間、全国の約150カ所の現場で稼働している。
また、競技会にも注力。同社では年間、2号玉から1尺玉までの打ち上げ花火を約2万個製造。「コンテストで入賞などすれば、卸業者から注文が増えるし、大会などに呼ばれることにもなる」と話した。
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「これからはエンターテインメントの要素を強めたイベントを提案していきたい」
5月24日、松本市安曇の体験型アクティビティーとキャンプ場などを併設した施設、乗鞍BASEで、花火イベント「はなびりうむ2025」が開催された。
同イベントは、今年で2回目。乗鞍高原で観光業に携わる人と、「何かできたら」という話の中から実現したイベントだ。初回は同社が主催し、今回は共催という形で関わった。煙火店が主導するイベントは全国的にもまだ珍しいという。
特徴は「その場に来ないと見られない花火」。入場料を設け、映画館で映画を見るように、限定された空間で、音楽に合わせて打ち上げられる花火を楽しむという仕掛けだ。
2回の開催で、いずれも入場者の約8割が県外者。「花火を通じて乗鞍という地域を広く発信できる」とし、「県外からお客が来れば経済効果も大きい。こうしたイベントを自治体などに呼びかけて増やしてきたい」と意気込む。
若き職人は「日本の花火」という独特の伝統、文化を継承しながら、新たな見せ方に挑む。
かみじょう・りょうじ
松本市出身。松本第一高から、松本大に進む。卒業後、飯田市の煙火店で約3年修業。26歳の時に華松煙火に入社し、専務就任。