【ガンズリポート】返礼品はアルウィン座席をアップサイクル 子ども用いすをCFで

松本山雅FCの運営会社が、子どもの観戦に使う携行型のいすへの投資を募るクラウドファンディング(CF)に取り組んでいる。リターン(返礼品)として、サンプロアルウィンの古い座席に4本の脚を付けたいすを作る。いすを介して小さなファン・サポーターを支援してもらおうというプロジェクトだ。
発端は昨年末のサンアル改修工事。古い座席が大量に撤去されたが、「愛着があり欲しい人もいるはず」(山雅の曽根原克朗業務サポート部長)と50席を譲り受け、松本市内の業者の手で四つ脚のいすにアップサイクル(新しい価値を付けた再利用)することにした。設計はアーキディアック(島立)、製造は安藤木工所(庄内1)。
このいすを販売することも検討したが、売上金の使い道が問題だった。サンアルに関連して使うのが筋だが、例えば改修工事費に充てると、微々たる貢献にしかならない。
そこで候補に浮上したのが、社内で別に進んでいた子ども向けポータブルチェアの導入計画。「いすのお金はいすに」という考えだ。「サンアルは楽しい、また来たいという体験を、子どもやその家族にしてもらいたい」と曽根原部長(49)。そんな環境づくりへの共感も広げたいと、CFという手段を選んだ。
支援は1口7万7千円。24口を募り、ポータブルチェア5脚を購入する。サンアルの備品にし、山雅の試合以外でも使う。募集は地域特化型のCFサイトFANTo(ふぁんと)!信州応援CF=で6月30日まで。

子ども連れでも不安なく観戦を 試合で需要確認

子ども向けポータブルチェアの導入は、山雅が妊娠中の女性や子育て中の母親をサポートしようと取り組んできた「ママサポ企画」の一環だ。
小さな子ども連れには「長時間の膝上抱っこがつらい」「子どもが動き回る」といった理由で、スタジアム観戦をためらう人が多いという。そのハードルを下げるのがポータブルチェア。J1の広島や神戸などが導入している。
外部からママサポ企画に携わる「ローカル・スポーツイノベーション」(名古屋市)の薄隅雄樹社長(38)は、ポータブルチェアの販売会社とつながりがあり、まずはレンタルして5月3日の金沢戦に10組を招くトライアルを企画した。
参加した安曇野市豊科の神谷朱莉さん(29)は今春、県外から移住したばかり。トライアル企画をSNS仲間に教えられ、「『来ていいよ』と言われたようで安心した」と、3歳の長男ら家族4人で初めてサンアルで観戦することにした。
企画には33組の応募があり、試合後のアンケートでも高い評価を得た。「ポータブルチェアに需要があることが確かめられた」と薄隅社長。後押しを受ける形で、前述のいすのCFが同26日にスタートした。