人気のカレー店再出発 鹿教湯温泉から安曇野のシェアキッチンへ

鹿教湯温泉(上田市)で人気のカレーが、トンネルを通って安曇野へー。紙芝居作家の濱重俊さん(80、松本市蟻ケ崎3)が、同温泉のカレー店「白翁」の名物バングラディシュカレーを復活させたのは、4年前。その営業を1日に終え、ゆかりのある安曇野市穂高のシェアキッチンで6日、再スタートを切った。
80歳で引退と決めていた。車で三才山を越えるのが苦痛になった。「これから人生をどう歩こうか」。模索していた時、シェアキッチンのオーナー山田顕司さん(45)と出会い、道が決まった。
詩人、坂村真民(しんみん)さんの「七字のうた」を座右の銘に、真っすぐに生きる。

店はできるだけ長く続けたい

安曇野市穂高のシェアキッチン「君ノ珈琲(きみのコーヒー)」で、木~月曜の昼に開く「カレーのGEN」。カレーメニューは「安曇野プレミアム」(1200円)、「無敵のプレミアムビーフ」(1400円)。食後の珈琲はハンドドリップで200円。
カレールーに入るスパイスは、シナモン、カルダモン、ローリエなど15種で、こくがあり、香ばしい。発芽酵素玄米の上にはカボチャ、ナスといった素揚げの野菜が11種載る。濱重俊さんが提供する自慢の味だ。
濱さんは2020年、鹿教湯温泉活性化の相談を受け、菓子店などの会社社長、生田淳一さんと出会った。その際、生田さんの妻・千鶴子さんの急逝で、17年に閉店したカレーの店「白扇」を訪れた。県外からもファンが訪れる人気店だった。
店内は何もかもが営業していた時のまま。時が止まったかのようだった。「もう一度息を吹き込みたい、時を動かしたいと思った」と濱さん。千鶴子さんの残したレシピと3食分だけ残っていた冷凍のカレーを頼りに、看板メニュー「バングラディシュカレー」の復活に取り組んだ。
常連からもお墨付きをもらい、21年5月にオープン。辛く、スープカレーに近かった。1年半はレシピ通りに作り続けた。生田さんから「オリジナルを出したら」という提案を受け、自分なりに工夫。現在のカレーにたどりついた。「腕を上げましたね」「おいしい」など好評で、自信になった。

さよなら鹿教湯ただいま安曇野

「80歳が仕事の締めくくりの年」と思っていた。三才山を車で越える通勤も苦痛になり、4年間続けた「白扇」を今月1日、閉店した。人生の最終章をどう描くか|。模索していた時、君ノ珈琲オーナーの山田顕司さんと意気投合し、シェアキッチンで「カレーのGEN」を開くことに。穂高は祖父母がいた場所で、自身も大王わさび農場に勤務したことがある。「さよなら鹿教湯、ただいま安曇野という気持ち」と濱さん。
GENの由来は、バングラディシュカレーが「幻のカレー」といわれたことから。元気、表現、原稿|など、“げん”という響きが好きだという。
紙芝居作家として作品を作ったり、穗髙神社に奉納する盆踊りづくりに関わったりと、やりたいことがたくさんある。カレーパスタも手がけたい。「いたって健康。店はできるだけ長く続けたい」
元気の秘訣(ひけつ)を尋ねると、「心がけているのは、詩人、坂村真民さんの『七字のうた』」という。「よわねをはくなくよくよするな」といった、自分を戒める内容の詩だ。「フレーズが自分のエネルギーになる」という。
トレードマークは黒装束で、外国人から「忍者」と言われたこともある。黒い帽子に着けたトンボのブローチも印象的だ。「母校の校章で、真一文字に飛ぶ。そのように生きたい」と意欲的だ。
午前11時~午後3時。