
松川村地域おこし協力隊員の大森圭悟さん(28)は村社会福祉協議会に出向し、ボランティアコーディネーターを務めて2年目。人と人とのつながりを促す一方、柔道整復師の資格と経験を生かし、元気に暮らせる地域づくりや健康寿命延伸のサポートに動き回る。任期終了後は村内で接骨院を開業したいという。
経験生かし健康増進サポート
さいたま市出身。小学生の頃、サッカーで傷めた膝を柔道整復師に親身に治療してもらい、「自身の手で人の体を治す仕事に憧れた」。同市や東京の整形外科医院に勤め、主にリハビリを担当した。
自然や山登りが好きで、北アルプスの麓への移住を望んでいた。JR大糸線の細野駅から見えた車窓の風景に心が動き、「おためし移住」で触れた住民の温かさに魅了され、昨年6月に村の協力隊員に。社協では、地域内でボランティアを必要とする人と、ボランティアをしたい人をつなぐ役割を担う。「つなげることで双方が幸せになる。人と深く会話してニーズをくみ取り、それを結んでいくことがやりがい」
高齢者が身近な場所に集う「地区ふれあい会」のサポートもする。参加者の明るい声や表情を目にし、地域の居場所の大切さを実感した。コロナ禍で減った人のつながりのあり方を探り、時代やニーズに合った形で再構築していく取り組みを、住民と共に進めていきたい―という。
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一方で、専門性や医療現場での経験を、地域の健康増進に役立てる活動にも力を入れる。その一つが、ポールを両手に握って歩く「ポールウォーキング」の講座。姿勢の改善や運動効果、認知症の予防などが期待できるとし、「北アの景色を見ながら歩けたら楽しい」と指導者資格を取得。昨年10月に始めた。
月1回の講座を2クラス設け、参加者計約30人に歩き方を教えた後は、1時間の「お茶会」を開く。つながりを求める人のための場を自身でも設け、茶飲み話で出た体の悩みに助言もする。
シニア世代が村すずの音ホールで運営するカフェスペースで月1回、保健師などの資格を持つ人と一緒に開く「暮らしの保健室」でも、健康相談に応じているほか、今月から村内のレンタルスペースで整体の施術も始めた。
農家が多い地域柄、農家はどのような体の使い方をするか、自ら経験して体の悩みに向き合おうと、自宅アパートの前の小さな畑で野菜作りに挑戦中。「ちょっとした体の不調を放置せず、早期に気付いてケアする習慣を付けてもらえたら」。地域に根を張り、住民の健康意識を育てようと、少しずつ種をまいている。