RCカー専門店「オールドタイマーズ」松本の書店2階に開店

無線操縦(ラジオコントロール=RC)カーの店「Oldtimers(オールドタイマーズ)」(松本市平田東2)を訪れるには、書店に入ることになる。「興文堂平田店」の2階にあるからだ。
階段を上ると明るく、広い。商品は大ぶりな箱のイラストを見せるように並び、ギャラリーの趣も。脇のサーキットも、ゆったりしつらえてある。
「本屋さんの中に、こんなおしゃれな模型店ができるとはね」と長年の愛好家、小野和美(かずよし)さん(55、同市)。たいていの人が、模型店のイメージを覆される。
それが店主の平野友太さん(49、同市波田)の狙いだ。子どもの頃に夢中になったRCカーの魅力を再発見し、5月に開店。「古いものはかっこいい」。そんな思いで店名を付けた。

世代問わず実物に触れられる店に

40年ほど前、四輪駆動車や四輪バギー(オフロード用の乗り物)のモーター付き模型を無線操縦で走らせるRCカーがはやった。少年漫画誌のタイアップ連載に、たくさんの子どもが胸を躍らせた。平野友太さんはその世代の一人だ。
大人になると熱は冷めたが、昨秋、再燃した。山形村で開かれた大会に友人と出かけ、復刻されたRCカーに目を奪われた。レトロで洗練されたデザイン。「懐かしくて、かっこいい。今っぽく言うと、エモかった」
商品を自分で買って、組み立てた。立て続けに何台も。そして気付いた。昔はたくさんあった地域の模型店が激減していた。
この業界も、インターネット販売が主流になっていた。だが平野さんには、店に何度も通って商品を眺めた、子どもの頃のような体験が貴重に思えた。
山形村の大会で、自分と一緒に友人の子どもが「かっこいい」と目を輝かせた姿も覚えていた。きっと現代っ子にも響く―。気軽に通えて、実物に触れる場所をつくりたいと思った。

長く主夫だった平野さん。物件探しに苦労する中、たまたま立ち寄った書店で、ロフト状の2階があることに気付いた。「あそこを店にできないか」。相談すると、RCカーに興味を持ってくれた。
「自分も子どもの頃に憧れたから」と興文堂の奈良井功社長(64)。専門誌が地道に売れ続けており、一定の需要があるとも見込んだ。
平野さんには、力を入れて扱いたいブランドがあった。「BLOCKHEAD MOTORS(ブロックヘッドモータース)」(千葉県習志野市)は、RCカーにアウトドアやファッションなどの若者文化を取り入れ、アパレルやグッズも展開する。平野さんは「マニアな世界を、ポップで身近なものにする仕掛けがうまい」と思っていた。自身もマウンテンバイクを楽しむアウトドア派。店づくりの色を固めた。
オールドタイマーズの開店は、ファンの間で話題になっているという。山梨県身延町から友人2人を連れて訪れた石井博さん(35)は「おしゃれで品ぞろえが豊富。来て良かった」。店内コースで試走も満喫した。
折しも、松本市丸の内の老舗模型店「アサヒ堂」が今月閉店。以前通い詰めた平野さんは、在庫の一部を譲り受ける予定だ。
「僕のようなおじさんファンから初めての子どもまで、間口を広くしてRCカーの魅力を伝えたい」

営業は正午~午後7時。水曜定休。TEL0263・55・8432。公式インスタグラムはこちら