92歳の現役作曲家・歌手 歌唱も指導 松本と松川で歌謡教室主宰する岩垂昭平さん

ジャンル幅広く勉強も工夫も

「音楽療法があるように、歌は健康に良い」。そう力強く話すのは、松本市笹賀の「SLC音楽事務所」代表で、同所と松川村で歌謡教室を主宰・指導している岩垂昭平さん。作曲家、歌手としても現役の92歳だ。
若い頃から音楽が好きで、仕事の傍ら作曲を学んで作品を作り、60歳の頃に同事務所を設立。67歳でキングレコード(東京)の認定指導者に、77歳で自身が歌手デビューした。
5月24日に塩尻市レザンホールで開いた同事務所の歌謡発表会では、応援参加の「ラウレアフラスタジオ」のメンバーが踊るフラダンスをバックに「憧れのハワイ航路」を披露。歌手「笹あきら」としてオリジナル曲「男だったら」など3曲を歌い、かくしゃくとした姿に大きな拍手が送られた。

15歳から続く音楽への情熱

現在塩尻市在住の岩垂昭平さんは、松本市笹賀の生まれ。15歳の頃にアコーディオンを弾き始め、地元青年団の応援でバンド「小俣ギタークラブ」を結成した。活動するうちに編曲などの知識がないことに気付き、2年で解散した。
「音楽を学びたい」と高校2年生の時に家出して上京。戦後間もない混乱期で、頼ろうと思っていた親戚には帰るよう言われ、住み込みで働く場所を見つけるも、歌を学ぶ場所も時間的な余裕もなく、3カ月ほどで松本に戻った。
親戚が営む会社などで働き、経理や精密機械の部品加工などの技術を習得。28歳で独立し、塩尻市などで精密機械の部品加工会社を営んだ。その間も歌への興味は失わず独学で学び、のど自慢やカラオケ大会などに出場。東京にも通い、50代の頃に知り合った作曲家の大野弘也さん、宮川つとむさん(いずれも故人)に作曲を学び、作曲活動を始めた。
1988(昭和63)年、生まれ育った家の土地に工場を縮小して移転。2年ほどして工場の閉鎖を決め、後利用を考えていた時、「カラオケをやれる所をつくってほしい」という声があったことから、多くの人が楽しめる場所にしようと「SLC(昭平レッスンクラブ)アカデミー」を発足。
歌唱指導をしたり、懐メロなどを歌うサークルが集ったりできるようにし、自身も勉強を続け、キングレコードの認定指導者になり、歌手・笹あきらとしてデビューも果たした。

松川村でも「笹歌謡教室」を開くなど、多い時は250人ほどの生徒を抱えていた岩垂さん。「健康のためにはちゃんとした発声が大切」と、腹式呼吸や「言葉を丁寧に置いていくこと」などを教えた。一方で、「ジャンルによって歌い方が変わる」と、幅広い歌や新曲も積極的に聴いて自ら実践。事務局の70代女性によると「生徒以上に勉強している」という。
今回、初共演となった「ラウレアフラスタジオ」のメンバーには、フラの指導者から歌唱も学んでいる人が多かった。歌やダンスの発表で協力を呼びかけられた岩垂さんが「同じ音楽」と快諾。ステージでは「ダンスを引き立てるような歌い方をした」と工夫も怠らない。
今なお「作曲してほしい」と歌詞が送られてきたり、カラオケに自身のオリジナル音源を上げる予定もあったりと、まだまだ現役続行中だ。