
Q 技能教科が好きなのに、通知表の成績が上がりません。3年になったら高校の内申に響くと聞くので不安です。(中学2年男子の父、前編)
教科性理解し対策…も重要なのは“体験”
A 音楽、美術、保健体育、技術家庭科は、技能(実技)4教科と呼ばれています。これらは、多くの子どもたちが「一番得意・好きな教科」にあげるほど人気科目です。でも主要5教科と呼ばれる国数社理英と比較して評価の付き方が分かりにくく、重要視していなかったため、急に調査書(内申書)に関わるといわれどうしよう…というような悩みを聞くと、切ない気持ちになります。
芸術センス、運動能力、手先の器用さ…差があって当たり前。今は他者と比較されない絶対評価だし、自分らしく楽しみながら学ばせてあげたい。ところが実際は集団の中で数値化され、それが高校受験に響くわけです。何とか評価を上げたいという気持ちは分かります。
技能教科のテスト勉強となったとき、多くの子は後回しにします。なぜかって、これらの教科は週に1~2時間程度。だから授業のプリントや板書ノート、参考書や問題集も少ない。テストは年に1回ですから、失敗しても挽回する機会はありません。また、先生側から見ても授業数が少ないうえに受け持ち生徒数が多いため、個性を見極め、一人一人に今後の学習の方向を適切にアドバイスするのが難しい。
そこで先生方は、授業後に自分の気付きや成長を感想用紙や学習カードを書かせて、1時間の成果を確認します。そこで体育が苦手だから学習カードを細かい字でたくさん書こう、などと対策する生徒もいました。ただ運動が得意なのに文章が苦手だと不利になりますが…。美術や家庭科などは、作品の出来栄えや丁寧さはもちろんですが、提出期限を守るかどうかも意欲・態度の良しあしにカウントされます。などなど教科性を理解し、これらに気を付ければ評価は上がりますよ。
ということを、本当は言いたくありません。これらの教科(他も)について「先生の評価が」とか「高校への内申が」とかではなく、もっと重要な人生に関わる学びをしていることに、大人こそが気付いて子どもに伝えてほしいのです。何度も言いますが、子ども時代の体験は宝です。
でも家庭では限界があるし、親にも得意不得意があるため、考えが及ばないことも多い。でも代わりに学校が生活に密着している、または今まで知らなかった世界に触れ、人生を豊かにする「技能(経験を通じて獲得する能力)教科」を提供してくれている。大人になって教室や講座にお金を払って深く学ぶような内容もあります。考えてみると、とてもありがたいことなのです。次回に続きます。(小島亜矢子一般社団法人こどものみらい舎代表)