木曽・開田高原「ヤマとカワ珈琲店」ECサイト全国コンテストで5万店の上位10店に

木曽町開田高原の自家焙煎(ばいせん)コーヒー店「ヤマとカワ珈琲店」が、EC(電子商取引)サイトの優良店を審査する「カラーミーショップ大賞2025」で、全国約5万店から10店が選ばれる「優秀賞」を受けた。
「カラーミーショップ」は、インターネットグループ・GMOペパボが運営するECサイト構築サービスで、利用者は国内最大級。コンテストは利用店を対象に行い、各店の売上高やPR、成長率などが重視される。
「日々、こつこつやってきた積み重ねが評価されうれしい」と代表の川下(かわした)康太さん(42、木曽町開田高原)。大阪府出身で信州に移住し、コーヒー店を開いて11年になる。
未経験だった自営業。試行錯誤を重ね、顧客目線での情報発信を大切にファンを増やしている。

一方通行ではないつながりを

木曽町開田高原の一角で、小さな建物からコーヒーの香りが漂ってきた。ここは「ヤマとカワ珈琲店」の焙煎(ばいせん)所。代表の川下康太さんの情報発信拠点だ。「コーヒーをもっとおいしくするポイント」「手軽で簡単なアイスコーヒーの作り方」…。同店の公式ホームページのブログには、自宅でコーヒーを楽しむこつが満載だ。
カラーミーショップ大賞の上位10店に選ばれ、「とても売り上げが高いとか、伝統工芸品を扱っているとかでなく、コーヒーという日常品を扱っている小さな店が注目されてうれしい」。2023年に中部地区の代表として地域賞を受け、今回は全国区の受賞となった。
コンテストは一般投票と審査員評価で選び、表彰式は5月22日、東京で開かれた。主催者からは「山間にたたずむ焙煎所から地道に発信を続け、顧客との密なコミュニケーションを実現。コンテンツの一つ一つが視認性に優れ、写真や言葉にも洗練性が感じられる」と評価された。
同店が扱うコーヒー豆は8~10種類ほど。長野市と伊那市(23年開店)に店舗があり、スタッフは5人。豆のほか、ノベルティー(販促品)や販売物としてのオリジナルドリップバッグ製造、木曽の作家が作った木製計量スプーンなど器具の販売にも力を入れる。
思い入れの深い豆はペルー。26歳の時に初めてドリップコーヒーを飲んだ銘柄がペルーで、そのおいしさに感動しコーヒーが好きになった。現在もその味が自身の指針になっている。
大阪府出身。大学卒業後、建築資材メーカーに就職し営業を担当した。30歳を前に人生を考え、自営業をしたいと、好きなコーヒーを扱うことに。知人から長野市の善光寺近くにリノベーションした古民家で開業している人が何人かいると聞き、実際に足を運び「自分もこういう店ができたら」と移住。14年に店を開いた。
当初の3年間は有料試飲スペースを設け、カレーも提供していたが、コーヒー豆をゆっくり選んで買ってもらいたいと、豆の販売のみに。妻の美帆さん(38)と出会い結婚、2児を授かった。22年、長男の小学校入学を機に自然豊かな場所で子育てしたいと、美帆さんの祖父の家がある開田高原に引っ越した。
開業当初からSNSで情報発信はしていたが、それほど反応はなかったという。20年にインスタグラムで、家でのコーヒーの入れ方を動画で紹介したところ、反応が急増。一方通行でないやりとりの大切さを実感した。
現在、フォロワーは2万4千人ほど。LINEは一斉配信でなく一人一人とつながる工夫を、インスタグラムは客の質問を基にQ&A形式にするなど役立つ投稿に。質問には毎日、返事をする。
「今日できることをちゃんとやれば、少しずつ応えてくれる人が増えていく」。スタッフや顧客に感謝の気持ちを忘れない。
ここ数年、SNSの使い方など事業展開の相談を受けることも増え、講座の講師など支援サービスにも取り組み始めた。「田舎にいてもこういう仕事ができると、移住と起業を考えている人の参考になれば」。コーヒー店を軸に、さまざまな関係性を育てていく。