
子の発想豊かにする体験を
松本市の才教学園小中学校は、数学者で東京理科大栄誉教授の秋山仁さん(78、東京)を招き、特別教育講演会を同校で開いた。秋山さんは「さんすう大好き人間を育てよう!」と題して話し、在校生の保護者や子どもの入学を考える人など約200人が聞いた。(6月21日)
私は子どもの頃、親の言うことは聞かず、勉強もせず、行儀も悪く、友達とけんかをし、すぐばれるようなうそをしょっちゅうついていた。親が困って、私を発達心理学の大家で当時聖心女子大助教授だった岡宏子先生の所へ知能検査に連れて行った。
そこで先生は母に「異なった個性を持っているんだから、人と比較してプレッシャーをかけるとよくない。大自然の中でのんびりと育てるのがいい」と諭してくれたようだ。それから母は私に何も言わなくなった。私は私立小学校に通い、自由に伸び伸びと育った。
時代は変わり、これからのAI時代に向けて、理工系に強い人材とはどんな能力を持った人間なのか。▽不思議に気付く能力▽自分で問題を見つける力や感性▽いろいろなものを組み合わせ新しいものを創る力▽人と関わる力、コミュニケーション能力─などだ。親は、自分で興味関心を持って何かやりたいという子の、応援団長になってほしい。
従来の教育では、ペーパーテストで測定できる能力が、学力や知力とされてきた。しかし、これでは思考力や創造力を育めない。これからは▽想定外なことに対応できる能力▽従来の方法では解決できなかった問題を、新しい視点から捉え分析し解決していく能力─などが必要とされる。
子育てでは、褒めると叱るをうまく組み合わせよう。叱り方は、感情的に怒ってはいけない。冷静になってそれがなぜ悪いことなのか、子どもの心に染み込むように諭して。
子ども時代に体験させるべきことは、自信を持たせること。また、世の中には面白いものや不思議なものがあふれていることを伝えてほしい。それが意欲を喚起し、発想を豊かにする源だ。栽培やDIY、絵画造形、楽器演奏などをする親を見て、子も無から何かを創ろうという気になる。
昨日までできなかったことができるようになったという体験をさせ、褒めてあげよう。