
松本市島内の奈良井川沿いに立つ、おとぎ話から抜け出してきたような建物。美容師として19年働いてきた犬飼佳子さん(島内)が、5月に独立開業した美容室「HairSalon Sarah(サラ)」だ。
イメージは「ディズニー作品の世界」。コンセプト提案や設計、建築まで関わり、外装には東京ディズニーシーのアトラクション造設に携わった職人らを招いた。内装も、雰囲気に合う調度品や使い勝手のいい設備を自ら探し求めた。
仕事や子育てと並行し、開店準備に2年を費やした。犬飼さんのバイタリティーの源は「お客さんへの感謝」だ。「プライベートサロンでもある。非日常感を味わいつつも、気楽にくつろいでほしい」と話している。
気軽に「お姫様」になれる場所
松本市島内の「HairSalon Sarah」。代表の犬飼佳子さんが「内外装ともディズニー作品の世界をイメージした」という店は、日常とは違う異世界の雰囲気が漂う。カットは大人3500円から、小学生2千円からと、リーズナブルな価格にもこだわった。
研究を重ねた白髪ぼかしの技術に自信を持つ。しっかりと染めるのではなく、ハイライトやカラーで、伸びてくる根元を目立たなくさせる。
デジタルパーマは最新技術を取り入れ、所要時間を90分ほどに短縮。「例えば忙しい子育て世代に、時間を有効に使ってほしい」との思いから学んだ。
山あり谷あり…客への感謝深め
「お客さんのためなら、手間や努力も何とも思わない。無理めかなというご希望も遠慮なく伝えてほしい」と明るく笑う犬飼さんだが、美容師生活は順調ではなかった。
大町市出身。小さい頃から人に喜んでもらうことや、他人の髪を触るのが好きだった。二つの「好き」を生かせる美容師として働くことを、当時から思い描いていた。
美容師になったものの、20代で大病を経験。職場では客からの人気をねたんだ同僚たちに嫌がらせを受けた。美容師を辞めようと考えたこともあったが、常連客が励まし、支えになってくれた。
「つらい思いもしたからこそ、人の痛みや苦しみが分かるようになった。お客さんへの感謝も、いっそう深まった」と言う。
独立・開業を考えるようになった頃のこと。客との雑談で「新型コロナ禍や入場料値上げで、ディズニーランドからすっかり足が遠のいた」という話題が出た。「じゃあ、そんな場所をつくれば喜んでもらえるかな」。店のコンセプトが固まった。
建築に際し、自宅を建てた会社の縁で、ディズニーシーを手がけた職人らへの依頼が実現。思いが形になっていった。
「美容師は天職」人に寄り添って
オープンして1カ月半。「お客さんのために頑張って、喜んでもらえると、また頑張りたくなる。そういうサイクルができてきた」と、手応えは上々だ。
店名の「Sarah」は、ヘブライ語で「お姫様」や「王女様」の意味。言いやすく覚えやすいことに加え「さらさらの髪」ともかけた。
「技術やサービスを提供するだけでなく、いろいろなやりとりをして、その人に寄り添える。美容師は天職だと思っています」と犬飼さん。「地道に努力や工夫を重ね、多くの人が気軽に『お姫様』になれる場所にしていきたい」と思い描いている。
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午前9時半~午後6時。日曜・祝日休。予約はインスタグラムからかTEL080・9773・2352
