
安曇野と新潟を融合させ、出身地安曇野を元気にしたい。若者が頑張り、大人が支えるコミュニティーのモデルになればー。上野真路(しんじ)さん(24)は12日から、安曇野市穂高のスープカレー店ハンジローが営業しない曜日に店舗を借り、カフェ「ARARAT CAFE(アララトカフェ)」を始める。
開志専門職大(新潟市)3年時に起業、商社と連携し、商品を開発した経験を生かしてのスタート。ハンジローのカレーと鈴木コーヒー(新潟市)のコーヒーを楽しめるメニューにする。
物価高、収入の心配、人間関係など、漠然とした不安を抱える若者は多い。上野さんは、自分が生き生きと頑張る姿を見せることで、「若者の県外流出の歯止めにもつながれば」と期待している。
多様な道進む若者の励みに
上野真路さんは、新潟市に2020年に開学した開志専門職大の1期生。起業を応援する校風だったといい、3年生の時、キャンパス内にオフィス「ARARAT CREWS(アララトクルーズ)」を設立した。既存の企業への就職も考えたが、子どもの頃、体が弱かったこと、だからこそ食の大切さを感じていたことが決め手となり、「食とヘルスケアの企業をつくる」と決意した。
同市の商社、鈴木コーヒーと業務提携し、コーヒーに入れる「ヘルスケアオイル」を開発、昨年7月に発売した。ココナツを主原料にしたブレンドオイル。「生活の中に入り込んでいる」「し好品というだけでなく、健康という付加価値を付けたい」と、両者の思いが一致した。
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大学を卒業、故郷にも目を向ける中で、上野さんが注目したのが、安曇野市穂高のスープカレー店ハンジローだった。昨年7月、拠点を松本市埋橋2の「あがたの森店」に移し、安曇野店は木曜日のみ営業している。姉の後藤友愛(ゆうな)さん(28、安曇野市穂高)が働いていた縁があった。
目の前に穂高川、わさび田、北アルプスの眺め―。「安曇野がいっぱい詰まっている」。来店客とコミュニケーションが取れて、地元の人とのつながりも持てる。
「開放的で、県外から訪れた人の満足度は高いはず。ここで店を開きたい」。同店のオーナー、藤井拓也さん(50)に話を持ちかけた。藤井さんは「営業日を多くできれば、その分安曇野のおもてなしができる。コーヒーなども味わってもらえたら」と快諾した。
金~日曜営業の「ARARAT CAFE」では、ハンジローのチキンスープカレー、キーマカレーが味わえるランチプレートを考案。ドリンク付きで2千円前後を考えている。新潟市での経験を強みに、コーヒーは「雪室珈琲」など常時5種を用意。デザートのバウムクーヘンにも自信がある。
「まずは店を安定させ、ファンをつくること」と上野さん。その先には飲食だけでなく、「何をすれば喜んでもらえるか」をキーワードに、ニジマスのつかみ取りなどのイベント開催も視野に入れる。
藤井さんの思いを継ぎ、「地域に愛される店」を目指す。さらに上野さんの核である「食×ヘルスケア」にも発展させたい考えだ。「デジタルデトックスができるジム、AIが診断し体調や気分に合ったコーヒー提供などを実現させたい」と上野さん。新潟薬科大の小西徹也名誉教授と連携し、健康面でのコーヒーの機能性などもアピールしていく。
「肯定感あふれる社会をつくる」がARARAT CREWSのビジョンだ。社会に不安を抱き、希望を持ちにくくなっている若者に、前向きな時間を過ごしてもらう。「会社や店が、いろいろな道を進む若者の、励ましになればいい」と意気込む。
12日オープン。金~日曜午前11時~午後5時。TEL0263・82・0688