
イチジク皮切りに構想膨らむ
安曇野市、大町市など、県内でもリンゴの木のオーナーは一般的だが、昨年からイチジクの木のオーナー制度を始めた人がいる。白澤幸男さん(78、安曇野市豊科)だ。
6年前、友人からもらったイチジクの枝2本がきっかけだった。挿し木を繰り返し苗を育てた。挿し木をして2年で実を付けるという。簡単に増える上、無農薬・無肥料でも虫が付かないなど、育てやすい。生食、ジャムなど、食べ方もいろいろだ。
イチジクが人々の交流につながればと、オーナー制を思いついたという。「不老長寿の果物」といわれることもあり、栄養面にも目を向ける。今後は育て方を変えたり、オーナーと一緒に加工品を作ったりと、次の一歩を踏み出そうと考えている。
栽培手間少なく実の用途幅広く
安曇野市穂高柏原の「K-Sいちじく苑」。約750平方メートルに48本(うちオーナー制度用は45本)のイチジクの木が植えてある。白澤幸男さんが手がける畑だ。友人の笠井明さんから借りている。17日には今年初のオーナー会を開き、同市や松本市などから10人ほどが集まり、自分の木を確認。スイカを食べたり、白澤さんが漬けた梅を味わったりして交流した。
昨年もオーナーになった上野ひづるさん(68、松川村)は「イチジクが好き。家で育てたが、実らないのでオーナーになった。昨年はたくさんもらえた。生で食べられるのがうれしい」と話す。
白澤さんは6年前、友人の大谷宏光さん(78)に「桝井ドーフィン」というイチジクの穂先をもらい、挿し木をした。その後も自分で増やし、現在は「早生日本種(蓬莱柿・ほうらいし)」「ホワイトイスキア」を加えた3品種を育てる。妻の彰子さん(74)が好きだったこともあり、自宅庭には約120鉢が並ぶ。
イチジクの実にはビタミンE、ビタミンB6、葉酸、食物繊維、ポリフェノールなどが含まれ、健康、美容両面で注目を集める。生食の他にジャム、コンポート、ワイン煮といった加工品の材料になり、乾燥してもOKと用途は広い。
県内外に所有者苗や実の販売も
「イチジクで交流の輪を広げたい」とオーナー制を思いついたのは3年前。畑を借り、昨年からスタートした。1本3千円で、果実は50個を保証する。現在は17人がオーナーで、安曇野市をはじめ長野市、茅野市、横浜市の人も。34本が契約済みといい、9月と10月中旬に収穫とオーナー会を予定している。
現在は1本の木に1オーナーという形だが、今後は1本の木から2本の主枝を一直線上に伸ばし、そこから出た芽を上に伸ばしていくことで果実の収量が増える「一文字整枝棚」に徐々に変え、木から枝のオーナー制に変更する構想だ。
苗木の販売(1本800円)もし、果実は9月から「とよしな旬彩市」(安曇野市豊科高家)などで販売する予定だ。
「オーナーとコミュニケーションが取れたら」という白澤さんの最初の思いは実現した。課題は後継者がいないこと。だが、「加工所を借りて、オーナーと一緒にジャムやコンポートを作りたい」「来年からは盆栽にも挑戦したい」と、イチジクを核に夢を少しずつ広げていく。
白澤さんTEL090・4604・4465