松本の弁護士・安藤雅樹さん入門的な山歩きガイド本を出版

初心者でも無理なく歩け、四季折々の自然や絶景を楽しめる―。県内各地の入門的な山歩きの77コースを紹介した「絶景を楽しむ信州日帰り山歩(さんぽ)」を、松本市蟻ケ崎1の弁護士安藤雅樹さん(47)がしなのき書房(長野市)から出版した。
2年弱の間に全て登った。早朝の暗いうちに出発したり、1日に4カ所を登ったりしながら、各山の魅力、見どころを自身の目で確かめ、まとめた。さほど高くない標高の山が多いとはいえ、土日曜を中心に仕事の合間を縫っての山歩き・調査はハードだった。
日頃から山が身近な信州だが、地元の山に登らない人も少なくない。「県内に住む人たちに山の魅力を伝えたい。この本が気軽に山へ登る入り口になれば」と願う。

県内全域77コースを収録

県内の日帰り山歩きのガイド本を出版した松本市の弁護士安藤雅樹さん。2年前の7月初め、「ふと思いついて」北アルプス常念岳(2857メートル)に登った。稜線(りょうせん)までたどり着いて飛び込んできた槍ケ岳や穂高連峰などの壮大な姿に圧倒された。
以来、山の魅力のとりこに。「これまで何の気なしに眺めていた周りの山に登って、どういう山でどんな景色が見えるのかを確かめたいと思った」。登山アプリ「YAMAP」の地図を見て、登山道が整備され眺めがいい山を探し、出かけた。
安曇野市生まれ。京都大在学中に司法試験に合格し2004年、松本市内に法律事務所を開いた。仕事は分野を限定しない「マチ弁」(町の弁護士)を自認する。

出版の大詰めと仕事期限重なる

本の出版は、2010年にしなのき書房から「信州日帰りでゆく温泉」を発行した縁で話が持ち上がり、1年ほど前から準備を進めてきた。この間、県内のガソリン価格のカルテル疑惑が浮上し、今年3月末に県石油商業組合が設置した弁護士4人で構成する第三者委員会の委員を務めた。6月末に調査報告書を提出するまで3カ月。このタイミングが本の出版に向けた大詰めの段階と重なった。出版社との相談で、夏山シーズン前の発行を目指してきたからだ。「これまでで一番大変なくらい、忙しかった」と振り返った。

収録した77コースは、北の小菅山(飯山市)から南の富士見台(阿智村・岐阜県中津川市)まで、県内全域にわたる。中でも印象深いのは大姥山(おおばやま)(大町市)。山姥が住み金太郎が生まれ育ったと伝わる大穴があり、穴の中から筑北の山々を望むことができる。「岩の下に入って、昔の人も眺めていたのかと思うと、神聖な感じがする」
短期間で出版にこぎ着けたことに「形になって良かった。苦労して本を出している出版社の人たちを応援したい思いもある」。デジタル化の波に押されがちな紙文化だが、安藤さんは「本には自分が求めていない情報にも接する機会があり、興味や関心を広げてくれる」と、本の大切さを強調する。