ワシ・タカ類の環境調査員と木工作家の愛あふれる野鳥展 8月8日から安曇野

切り絵とバードカービング

「ハチクマのひなが巣立つ頃、イヌワシに襲われる危険を感じた成鳥がモビング(鳥類が集団で攻撃をしかけるかのように飛び回る威嚇行為)しているのを見た」「へえ、ハチクマがモビングするなんて初めて聞いた」
会話の主は、前者がワシ・タカ類の環境調査員、中村照男さん(74、池田町中鵜)。後者は木工作家で野鳥に詳しい伊藤長明さん(72、安曇野市穂高有明)。会うと野鳥の話で盛り上がる。
2人は8月8~19日、伊藤さんの妻・妙子さんが運営するギャラリーぬく森(穂高有明)で「野鳥展」を開く。中村さんは野鳥の切り絵を、伊藤さんは夫妻で仕上げたバードカービングを展示。中村さんは9日、同ギャラリーで長年追いかけている「鷹(たか)の渡り」の話をする。

「鷹柱」見た日から渡りルート調査

春から初秋にかけて日本にいるタカ(ハチクマ、サシバなど)は9~10月、暖かい東南アジアに向け飛び立つ。複数のタカが上昇気流に乗りながら旋回し上空に向かう「鷹柱」や、飛翔する姿を表す「鷹の渡り」は人気が高い。
中村照男さんは、「鷹の渡り」の観察・撮影場所として有名な白樺峠(松本市奈川)を40年近く前に見つけた。
中村さんが初めて鷹の渡りを見たのは30代の秋。有明山(安曇野市・松川村)で道に迷い、地形を見極めようと登った木の上で鷹柱を見た。「渡りが減る季節だったので、幸運だった」と話す。
そこから趣味としての、鷹の渡りのルート調べが始まった。白樺峠の観察地点を見つけたのは6年ほどたってから。「500羽くらいの渡りを見て感激した」。さらに、「鷹柱や渡りが1時間くらい続くのを見たことがある。魅力的だった」とも語る。
埼玉県秩父市生まれ。30歳で松本市に移住し、10年後に池田町へ。現在はフリーランスの環境調査員として、関東や東海にも足を延ばし、猛禽(もうきん)類を調べている。仕事とは別に、白樺峠に造った「たか見の広場」の整備や管理にも汗を流す。特に、渡りの時期に入る9~10月は大半を同地で過ごす。
白樺峠の観察地点を見つけてから共に活動しているのは「信州ワシタカ類調査研究グループ」。10人ほどの仲間で、同地を一般の人が観察しやすいように力を注いできた。「信州野鳥の会」や「日本野鳥の会」の会員にもなっている。
切り絵は1996年から。信州野鳥の会会報誌の表紙に使うために始めた。以来、毎月1枚制作。400枚近くがたまった。「ぬく森」の展示には、近作から15枚ほどを出す。
展示作品の一つ「ヤマセミ」は、カジカをくわえて飛ぶ姿で、20年ほど前に見たという。「ヤマセミは激減しめったに見られない」と嘆く。世界的な鳥類減少の流れの一つだ。切り絵はジョウビタキ、クマタカ、オオタカなどを展示する。

夫妻で作品作り 実物に近い姿に

伊藤長明さんは妻の妙子さんと共に30年ほど前からバードカービングを手がける。彫りは長明さん、彩色は妙子さんが担当。作品は実物大。「個体差があるので、一般的な平均値を取っている」と長明さん。今回の展示では14点を出す。
最近力を入れた作品はヤツガシラ。長明さんは30年ほど前に実物を見、「印象が強かったので、いつか作りたいと思っていた。今回やっと完成した」と満足げ。「広げると扇状になる冠羽は掘り出すのが大変だった」。彩色をした妙子さんも「私も冠羽の雰囲気を出すのに苦労した」。
目にする機会が少ないアカショウビン、サンコウチョウなども展示予定。ライチョウやシマエナガもある。

野鳥展は8~19日午前10時~午後5時。14日休み。中村さんが「鷹の渡り」について話す「“鷹”トークたいむ」は9日午前10時から。1ドリンク付き500円。要予約で30人。ぬく森TEL0263・84・4133