【ビジネスの明日】#75 かまくらや社長 藤本孝介さん

「農業を自身の職業にしたい人たちの、受け皿にならなければ」。こう語るのは、農業生産法人・かまくらや(松本市島立)の藤本孝介社長(44)だ。主力のソバ生産は堅調に推移。この状態を維持しながら、将来にわたって事業を継続させることが責務で、人材育成や労働環境の改善などに力を入れる。

持続可能な農業と会社経営を

現在、松本、安曇野市で、農家から借りたり、遊休荒廃農地を再生したりする畑の面積は約230ヘクタール。このうち、約150ヘクタールでソバの二期作を実施。残りの畑では加工用トマト、リンゴ、麦、大豆などを栽培している。
主力のソバの生産量は年々増加し、玄ソバで年200トン。県内全体の生産量は、年約3千トンで、「需要を見極めながら、県内シェア1割となる300トンを目指したい」とする。
また、安定生産も重要な課題。現在、全体の約8割を製粉メーカーなどに出荷。メーカーにとっては、最近の「令和の米騒動」に見られるような、原材料不足は最も避けたいリスクの一つと考え、「『かまくらやに頼んでおけば大丈夫』という信頼関係をさらに深めていきたい」と見据える。
同社と一緒に運営する就労継続支援A型事業所の安曇野みらい農園(安曇野市三郷明盛)にも注力。現在、利用者は13人で、それぞれの特性に合わせた仕事を提供。「障がい者が活躍できる場を確保したい」とし、20人までの増員を見込む。
二つの会社を運営する上で、重要視するのが「継続性」。現在、かまくらやが借りている畑の地権者は800人以上。「事業をやめると言ったら社会問題になる」と自覚。このため、人材確保のための労働環境の改善は大きな課題で「自然相手だから休みは不規則|などは通用しない。業務の効率化や生産性の向上などで対処していかなければ」と強調する。

大学卒業後、地元のスーパーマーケットに就職。販売のほか、店舗全体のマネジメントを経験。商品を売っていて感じたことがあった。「『安いですよ、おいしいですよ』と言って売っても、自分が作ったものではないので、心底、そう思えない。自分が作ったものを自信を持って売りたい」と。2014年、10年以上働いた会社を辞め、かまくらやに就職した。
「これまで家族で継続してきた農業を、会社で継続しなければならず、公共的な責任がある。次の世代に引き継げるような会社にしていきたい」と力を込めた。

ふじもと・こうすけ
1980年、飯田市出身。諏訪市の中学から、松本県ケ丘高に進学。大東文化大卒業後、県内のスーパーマーケットに就職。2014年、かまくらやに入社。23年社長就任。松本市里山辺在住。