
料理を思い描く時間も喜び
自宅や会場に料理が届き、準備も後片付けも任せられるケータリング。シェフがその場で腕を振るい、一皿ずつ料理を提供する出張シェフ。どちらも会話に集中できる安心感や、プロの味を身近に楽しめる特別感が醍醐味(だいごみ)といえる。
化学調味料に頼らず、素材の持ち味を引き出す「からだ想おもいのやさしい料理」をコンセプトに、独自のスタイルを確立しているのが信太育巳(しだ・いくみ)さん(57、松本市入山辺)だ。
シェアキッチン「Mr.OrangeSky(ミスター・オレンジスカイ)」(同市大手4)を拠点に「風のね」の屋号で活動。月曜日には「おむすびや」も営む。旬を大切にした料理、細部まで行き届いた盛り付け、穏やかな人柄と「もてなしの心」で利用者を魅了する。アレルギーへの柔軟な対応や、健康や環境への配慮も欠かさない。
信太育巳さんがケータリングと出張シェフで活動する原点は、夫の希生(まれき)さん(57)と共に2000年から静岡県伊東市で営んだペンションにある。18年間、宿の料理を一手に担い、創作料理を提供した。
転機は開業7年目。「食物アレルギーがある小学2年生の孫と一緒に宿泊旅行をしたい」という家族から相談を受けた。牛乳や卵、小麦など8種類の原因物質を使わない食事を研究・試作し、家族5人に提供した。子どもは初めて口にするプリンや生野菜に目を輝かせて喜んだ。その光景に心を動かされ、オーガニック食材や手作り調味料を使うようになった。
ペンション閉じ起業 松本へ
2011年の東日本大震災以降は客足が遠のき、2年後にペンションを閉じた。経営支援プログラムを受け、ケータリングと出張シェフで起業。開業から4年で常連客も増えたが、21年、母親の介護のため実家がある松本市に戻った。療養に寄り添いながら仕事を再開し、食材の入手先なども確保。みとりを経て、昨夏から本格的に「風のね」として始動した。
ケータリングサービスは2種類ある。一つはビュッフェ形式。忘年会や会議、各種パーティーなどで利用され、テーブルセッティングから片付けまでを一貫して担う。もう一つは、料理を届けて完結するケータリング。松花堂弁当などを指定された場所へ届ける。
出張シェフは、台所がある一般住宅が主な対象だ。お食い初めや還暦祝いなど記念日の席に利用される。先付(さきづけ)やローストビーフ、鯛(たい)の煮付けなど約15品を、懐石料理風に一皿ずつ配膳。持ち込んだ食材で調理から盛り付け、片付けまでを行う。
予約時に苦手な食材やアレルギー、飲酒の有無などを確認し、味付けの好みや提供方法など、会の趣旨に合わせた料理を提案。誕生日ケーキの用意や追加オーダーにも応じる。
静岡時代から信太さんのケータリングを毎年利用し続けている小林めぐみさん(50、静岡県熱海市)は「調味料まで手作りで安心できる上、料理の味も盛り付けも細やか。イベント内容に合わせて食べやすく工夫してくれるので好評です」と話す。
「料理を作っている時間が楽しくて仕方がない」という信太さん。今は今月の結婚披露宴に向け、パーティー料理の準備に余念がない。新郎新婦や親族、招待客に振る舞う料理を思い描く時間も、喜びの一つだ。
「特別な一日を任せてもらうのは光栄なこと。召し上がる方の笑顔を思い浮かべながら、献立を組み立てています」
ケータリングは1人6600円、配達のみ5千円(ともに10人から)、出張シェフは1人1万6500円(2人から)。いずれも1日1組限定で不定休。「おむすびや」は毎週月曜午前11時に開店。土鍋で炊いた秋田県産あきたこまちを使い、4種類のおむすびを販売する。問い合わせはメール(kazenone193@gmail.com)で。「風のね」のインスタグラムはhttps://www.instagram.com/kazenone_izu/。