松本・南上横田町 空き家の後利用「小さな公園」造り 災害時の避難場所にも

子どもたちの遊び場や、災害時の避難場所などとして活用して、より暮らしやすい町会にするための一助になればー。そんな思いが詰まった公園だ。
松本市東部地区の南上横田町(かみよこたまち)町会の町会長で、三協電気工業(同市女鳥羽1)会長の百瀬正容(まさやす)さん(75)は、同社隣の空き家が立っていた土地に、誰もが利用できる小さな公園「ポケットパーク」を造成している。
樹木を植えてテーブルやベンチを置く。井戸を掘り川を流し、ホタルなどが生息できるビオトープを造る。
12日に、公園のお披露目を兼ねた防災訓練を行い、今後は町会のさまざまなイベントも開く予定という。各地で空き家対策が課題になる中、「街づくりのモデルケースになれば」と期待する声もある。

ビオトープ拡大2つの「井戸」も

松本市の南上横田町町会長の百瀬正容さんが行っている公園造りには、県建築士事務所協会松筑支部まちづくり委員会のメンバーも協力。ポケットパークの名前は、百瀬さんの愛犬にちなみ「きょーたろー公園」にした。
公園の広さは、約500平方メートル。樹木を植えたり、屋根付きの休憩スペースを設けたりする。テーブルやベンチの材料は、工業用資材などを再利用した。
深さ30メートルと15メートルの二つの井戸を掘り、市民に日常使いの水として利用してもらうほか、松本市の「災害時協力井戸」制度に登録。災害時の生活用水にする。
また、造成地に接する場所にある、ホタル、川エビ、サワガニ、メダカ、カメなどが生息する、既存のビオトープを拡大。公園に流す川の一部を囲い、観察用の「ホタル小屋」も設ける。
既存のビオトープでは毎年6月頃、「ホタル祭り」が開かれ、地域住民約200人が訪れるなど親しまれていたため、さらに人気を呼びそうだ。

12日お披露目を兼ねて防災訓練

公園を造成する土地には、築約50年の老朽化した住宅が立っていた。長年、空き家になっていたことから、持ち主から土地、建物の後利用についての相談が持ちかけられていたという。
今年初めに売買が成立。当初は「建物は取り壊して、駐車場にでも」という案が有力だった。だが、百瀬さんに「小さな子どもや親子連れが、気軽に立ち寄って遊べる場所にしたい」という強い思いがあり、かなえることになった。
4月初旬に、百瀬さんの長男で、三協電気工業社長の百瀬友志紘(としひろ)さん(44)が土地の後利用について、仕事上の付き合いがある建築事務所、Y建築設計(同市大手5)社長の熊谷善紀さん(52)に相談。ポケットパークを造成することにした。
熊谷さんは、松本市を中心に今後の街づくりを考える、同支部まちづくり委員会の副委員長。各地域で空き家対策が課題になる中、「空き地に、こうした公共的な公園を造ってもらえると、地域住民にとってとてもありがたい」とし、今後のモデルケースにできるよう、記録の保存や情報発信などをしていく。
12日の公園のお披露目を兼ねた防災訓練には、南上横田町町会と近隣の町会の住民が参加して合同で行う予定という。
友志紘さんは、「父の夢や思いを形にできてうれしい。多くの人に親しんでもらえる公園になれば」と話した。