
「吹奏楽の甲子園」と呼ばれる「第73回全日本吹奏楽コンクール」(全日本吹奏楽連盟など主催)の中学生の部(10月18日、宇都宮市)に松本市の鎌田中学校吹奏楽部が出場する。
全国出場は5大会連続11回目。中信関係分では中学、高校、大学、職場・一般部門を含め唯一の出場だ。7月の中信地区大会(A編成=50人以内、出場24団体)、8月の県大会(32団体)、東海大会(5県20団体)まで全て金賞に輝き、中でも上位の代表(3枠)に選ばれた。
県内では“強豪校”だが、全国大会は2002(平成14)年の出場以来、金賞はなく、一昨年が銅賞、昨年は銀賞だった。今井愛莉部長(15)は「3年生にとっては最後の大会、今年こそ金賞を取って有終の美を飾りたい」と悲願達成に燃えている。
仲間を信じて難曲に挑戦
全国大会に出場する鎌田中吹奏楽部(顧問・塚田理恵教諭)。4日は松本市のキッセイ文化ホールを貸し切って、本番を意識して練習。外部講師を招いたレッスンも行った。「もっとホールに音を響かせることを意識して。もう1回!」との講師の言葉に「はい!」と元気な生徒の声が響いた。休憩時間にはサプライズで松本市内約20校の中学校吹奏楽部員が協力して折ったという1108個の千羽鶴を受け取り、全国大会に向け気持ちを新たにした。
代々受け継ぐ部の目標「人の心に響いて残る音楽」に加え、今年は「一意専心」をスローガンに掲げる。部員全員の心を一つに練習に励む。5月には学校でロビーコンサートを開き、1年生を勧誘。今年は17人が仲間に加わり、2年生21人、3年生18人の計56人で活動する。
課題乗り越え信頼関係築く
大所帯ゆえのコミュニケーション不足が課題だったといい、ミーティングに時間を割いた。パートごと、学年ごとに気持ちを伝え合う場を設け、信頼関係を築いてきた結果、合奏に変化が現れ、音のまとまりが良くなってきたという。
「仲良し大作戦」と題し、音色、音程、音形(音のつながり)の調和を目指して基礎練習から全員で演奏する機会も増やした。3年生の佐藤萌々香副部長(15、トロンボーン)は「楽器未経験で入部した後輩の指導に力を入れた。苦労した分、パート内で音の調和が取れてきた」とみる。
コンクールでは課題曲Ⅳの「Rhapsody Eclipse(ラプソディ・エクリプス)」(大島ミチル作曲)と自由曲の2曲を演奏する。自由曲には「宇宙の音楽」(フィリップ・スパーク作曲)を選んだ。課題曲と同じく、宇宙を題材にした曲だ。宇宙の創生から未来までを壮大に描いており、高度な演奏技術と体力、深い表現力が必要な難曲とされる。
冒頭のホルンのソロをはじめ、中間部のソプラノサックスやクラリネット、ファゴットなどのソロのリレーも聴きどころ。激しい拍子の変化や連符もある。ホルンのソロを担当する3年生の清水稜矢さん(15)は「東海大会ではミスをしてしまった。全国では完璧な演奏を、観客の心に響かせたい」と意気込んでいる。
もう一人の副部長、上條心音さん(15)は「中学最後の大会、緊張したらもったいない。楽しんで悔いのない演奏をしたい」。今井愛莉部長は「自分たちの納得のいく演奏ができたら結果も付いてくるはず。仲間を信じて目指すは金賞」と力を込める。
12月14日は同ホールで「サンクスコンサート」を開く。コンクールの曲をはじめ、ポップスやプロ奏者との共演など盛りだくさん。これまで支えてくれた人たちに感謝の音色を届ける。午後1時開演。無料。同校TEL0263・25・1088