日本泳法に姉弟で取り組む郷間千晴さん・結仁さん 貴重な文化の若い継承者に期待

古くから全国各地に伝わる日本独自の泳ぎ方「日本泳法」。松本市の神伝流松本同好会に所属する開成中学校3年の郷間千晴さん(15)と並柳小学校5年の結仁(ゆうじ)さん(11)は姉弟で取り組む。「競泳に生かしたい」(千晴さん)、「日本泳法を知ってほしい」(結仁さん)と理由は異なるが、2人で切磋琢磨(せっさたくま)している。

「競技に生かす」「広めたい」

日本泳法の独特な体の動かし方に面白さを感じ、昨年から習い始めた姉弟。千晴さんは諸流派が競う日本泳法大会(8月23、24日・千葉県)の個人種目「100メートル横泳ぎ競泳女子」で初優勝した。
6歳で水泳を始め、今夏の全国中学大会・自由形50メートルで6位の実力者でもある千晴さんは、速く泳ぐのが目的の「競泳」と、身を守ったり型の正確さや姿勢の美しさなどを重視したりする日本泳法の「どちらの技術も習得し、相乗効果があれば」と期待する。
実際に日本泳法の「水を足裏で踏む」「水を脚で挟む」といった動きは「水をつかむ感覚がより鮮明に感じられ、平泳ぎなどに生かせている」と手応えを得ている。

同大会の泳法競技ジュニアクラス男子に出場した結仁さんは、上位入賞はできなかったが、「日本泳法の存在を知ってほしい」と夏休みの自由研究のテーマに取り上げた。模造紙に日本泳法の歴史的背景や、実際に学んでみて感じたことなどをまとめた。
松本地域には江戸時代後期に「神伝流」が伝わり、当時「游泳(ゆうえい)術」と呼ばれた水泳に多くの人が取り組んだという歴史のほか、▽顔を水につけない▽バタ足をしなくても進む▽浮いた状態をずっと保てる―などの日本泳法の特徴から、「川や海などでおぼれた際に、活用できるのではないか」と考えた。「今後はさらにいろんな泳ぎ方を習得したい」と意気込む。

松本同好会代表の三輪千子さん(61、岡田松岡)は「海がない内陸の松本に伝わる日本泳法はまれな文化。伝えられる人も少なくなってきている」と存続を危ぶみ、「古くからつながる歴史的な文化を伝えたい」と、郷間さん姉弟を含む若い継承者に期待する。
日本泳法の流派は現在、全国各地に13あり、市の無形文化財に登録されている流派もある。県内では2流派が活動し、中信地方は神伝流だけで、松本同好会は11人が所属する。問い合わせは三輪さんTEL090・4161・6207