大町の救護施設れんげ荘 月2回の「れんげカフェ」 利用者と住民が物作りで交流

大町市平の救護施設「れんげ荘」で8月から今月までの月2回、施設に入所する利用者と地域住民が、物作りを通じて交流する集い「れんげカフェ」が開かれた。両者が一緒に、折り紙細工や編み物を学びながら楽しく過ごした。ここでの交流や覚えた技をきっかけに、施設と地域がつながる新たな動きが出始めている。
「カフェ」は、施設を運営する社会福祉法人大北社会福祉事業協会が、市社会福祉協議会と協働で実施。以前は、納涼大会などに住民が参加したり、ボランティアが施設を訪れたりして地域と交流していたが、利用者、ボランティア双方の高齢化やコロナ禍などで交わる機会が減少。このため、一緒に物作りを楽しむという、新たな切り口の交流の場を企画した。
10月10日午後。施設の作業室に集ったカフェの参加者たちは、毛糸を花の形に編むモチーフ作りに熱中した。この日は講師役の住民ボランティアが不在だったため、前回のカフェで作り方を習得した利用者が初参加の住民に教える姿もあった。
初参加の小林美代子さん(70、同市平)は「近くに住んでいるが施設に入るのは初めて。利用者さんが作り方を分かりやすく教えてくれた。話をしながら手を動かすとても楽しい機会」と笑顔で話した。
編み物が得意で教える側にもなった女性利用者は、今回の集いを終えて「疲れました」。しかし、そういう姿を見ていた同施設の小林由幸係長(52)は「表情にはうれしさがにじんでいた」とほほ笑んだ。

1~3回目のカフェでは、折り紙の「くす玉折で作るフランス人形」を作った。一通りの作り方を覚えると、施設を知ってもらうきっかけになれば─と、施設や職員とつながりのある市内の商店街の菓子店や洋品店計4店からもらった包装紙で作り、店に届けることに。参加者がカフェやそれ以外の時間で人形に仕上げた。
9日には包装紙をもらった各店を訪れ、作品を寄贈。和菓子店「御菓子司(おかしつかさ)喜久龍」(同市大町)の包装紙は白と黒が基調の和のデザイン。これを使い、高さ約20センチのフランス人形にした。受け取った同店の須澤あいさんは「雰囲気がすてきな洋風にがらっと変わってすごい」とびっくり。利用者たちは「喜んでもらえてうれしかった」と、ほっとした表情を見せた。
施設ではこれを機に、個人や店・企業などから「フランス人形」の受注制作をスタート。持ち込みの包装紙などでの制作にも応じる(1体200~400円)。毛糸で編んだ花のモチーフを使ったヘアアクセサリーなどを市社協(市総合福祉センター内)で販売予定。手縫い雑巾も1枚50円で販売している。
また、カフェの参加者から、れんげ荘をボランティア訪問して、自分の趣味や特技などで交流したいという申し出が複数あるという。
救護施設は、精神や身体の障がいや何らかの課題を抱え、日常生活が困難な人たちが利用する生活保護法に基づく施設。地域で自立した生活をするための支援も行い、れんげ荘でも地域との接点を増やしていく方針だ。
問い合わせはれんげ荘TEL0261・22・7000