「生涯の相棒」と100歳まで アコーディオン演奏が生きがい 池田の柴田勲さん 

独学で練習 レパートリー300曲

「老人よ大志を抱け」と、力強く呼びかける柴田勲さん(73、池田町中鵜)は、アコーディオン演奏が生きがいだ。「一度きりの人生、楽しまないと。何でも興味を持ち続ければ新しい発見につながる。心はいつも青春時代」。このポジティブな考え方とチャレンジ精神で、古希を手前に出合った“生涯の相棒”。やりたいことをやって、みんなに喜んでもらう幸せを体感している。
柴田さんは、この楽器を携えてシルバーカフェ沢村(松本市沢村3)などで開く「うたごえ広場」で伴奏を担当。小気味いい演奏で、参加者たちに気分よく歌ってもらう。
「メロディーも伴奏も、1台で弾くことができ、音も大きい。持ち運びも便利で、屋外で演奏できるのもいい」とアコーディオンの魅力を語る。

山が好きで、63歳で名古屋市から松本市の四賀地区へ移住。65歳で池田町に家を建て、落ち着いた。
一番の趣味は山登り。しかし、一人で気軽に登るのは難しい。「ほかに簡単に楽しめるものはないか」。卓球、テニス、マージャンに温泉巡りなど、いろいろなものを試したが、「ピン」とこなかった。そんな中、大町市で開かれた歌声喫茶を訪ねた。そこでアコーディオンで伴奏する人を見て、瞬時に「これだ!」と思った。
すぐに行動に移し、アコーディオンを購入。独学で練習を始めた。
一目ぼれして手にはしたが、この蛇腹楽器、そう簡単には弾きこなせない。「最初は泣きそうになった」。始めてから2年間は「(アコーディオンを)抱いて寝た」というほど、自分のものにしようと思った。簡単なことはすぐに飽きるが、難しいことほど楽しい。動画投稿サイト・ユーチューブなどを参考に、「この期間は引きこもりで練習した」。冗談ではなく、本気だった。
努力のかいあって、現在のレパートリーは約300曲。「リンゴの唄」「学生時代」「シクラメンのかほり」「津軽海峡・冬景色」などの昭和歌謡のほか、「早春賦」などの唱歌も弾く。「簡単な曲なら、初めてでも楽譜さえあれば弾ける」と胸を張る。
ぜんそくを患っているため、住宅には暖かさを求め、窓は3重構造に。断熱材も厚い。結果、防音効果も高まったといい、普段はこのお気に入りの空間で、思い切り弾いている。

大学時代。教員免許の取得を目指し、ピアノも練習。卒業後は「幼児教育こそが大事」という考えから、当時、男性では珍しかった保育士に。そこで童歌などを歌い、「歌で子どもと触れ合える。相手の感情をキャッチし、心が通じる関係がつくれる」と感じた。
アコーディオン伴奏を見て「これだ」と思ったのは、元々、音楽が好きだったことに加え、保育士時代の経験がよみがえったから。歌声喫茶でも、歌を通じて人と人とが触れ合ったり、つながったりすることに喜びを感じている。
「いい歌、いい仲間、いい人生」が今のモットー。楽しむことが健康法で、「やりたいことができていて、今が一番自分らしく生きている。120歳まで生き、100歳まではアコーディオンを弾くよ」。相棒との付き合いは、まだまだ続く。