
松本山雅FCの運営会社が推進役の一角を担う「信州100年企業創出プログラム」の本年度の活動が始まった。県内企業が抱える経営課題に県外の人材が取り組むプログラムで、山雅は企業側の窓口になっている。既存のスポンサーの支援になる一方で、新たなスポンサー獲得のきっかけにもなっているという。
同プログラムは山雅のほか信州大、民間シンクタンク「SCOP」(松本市)がコンソーシアム(共同体)をつくって推進している。都市部で働く人を公募で募り、面接などで選考。経営基盤の強化といった課題とマッチングし、県内企業で働いてもらう。
期間は10月から半年間。週のうち4日は企業で働き、1日は大学でゼミに出席したり講義を受けたりし、解決策を探る。最後に成果を発表する。
同プログラムは2018年度に始まり、山雅は「スポンサー企業へのサービスになれば」と推進役に加わった。企業の多くは課題に対処できる人材が不足しており、マッチする能力を持った人材の確保につなげてきた。
本年度は、いずれも松本市に本社がある松本信用金庫、大澤建築店、金属加工の鬨一(ときいち)精機の3社を含む20社ほどが要望。一方の人材は182人がエントリーし、マッチングの結果5社5人の組み合わせができた。10月31日には、信大松本キャンパスで開講式があり、信大から5人にリサーチフェロー(研究員)の委嘱状が手渡された。
ウォルト・ディズニー・ジャパン(東京)で映画のマーケティングなどを担当した今井康恵さん(61)は定年後、経験を生かしたいと応募し、ブランディングを課題とする松本信金とのマッチングが成立した。「金融とエンタメは全然違うようだが、人材が資本なのは同じ。一人一人が自分たちの価値を知り、ブランディングを担う」と意欲を語る。
松本信金の鶴見明夫理事長(64)は「地銀の合併を控えた地域で何ができるか。今井さんの知識に期待している」と話す。
山雅営業部の茂原諭さん(65)は「AIやデジタル技術などに通じた人はどの企業も欲しく、最近はスポンサー以外にもプログラムへの参加を勧めている。スポンサー契約の検討につながることもある」と成果を話す。